J1清水、積極的な守備から今季初の“無失点”で見えた光明 新たな攻撃スタイル確立も期待
【J番記者コラム】神戸戦では最終ラインを高くキープ、中盤とのコンパクトさを維持
第3節の横浜F・マリノス戦で2失点、続く第4節のセレッソ大阪戦では3失点を喫し、守備について「原理原則の整理」「ボールを奪う守備」「ゴールを守る」ということを平岡宏章監督は挙げて修正し、3月19日のJ1リーグ第5節のヴィッセル神戸に挑んだ。
神戸はリーグ戦ではまだ勝利がなく、4日前にはオーストラリアのメルボルン・ビクトリーとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフで120分間を戦い、その疲労は蓄積されているが、「神戸は勝てなくても神戸」とGK権田修一が警戒するように日本代表のFW大迫勇也はじめ、この試合では控えに回った元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタなど多くのタレントは健在であった。
「今回に限っては攻撃にはほとんどフォーカスしていない」と試合後に平岡監督が話したように直近2試合の反省から攻撃よりも守備に特化してこの1週間はトレーニングしており、清水がどう守備を立て直してきたかに注目していた。
横浜FM戦ではゴール前に人数は揃っているもののボールホルダーへ寄せきれずに先制点を奪われ、2失点目はゴールキックからのビルドアップを狙われた。この試合では最終ラインを高くキープして中盤とのコンパクトさを保った。
またバイタルとペナルティーエリア内では集中力を切らさずに粘り強く相手との距離を詰める守備ができていた。後半40分にイニエスタからパスを通されエリア内でFW小田裕太郎にボールをキープされたが、ここでは次々に選手が体を寄せてシュートを打たすことなく守り切り、その守備はまさに「ゴールを守る」というそのものだった。
ビルドアップについては割り切り、前後半で18本あったゴールキックのうち、ディフェンスラインからつないだのは前半の3本のみ。ただ、権田からのキックはほぼ相手ボールになってしまい、そこからセカンドボールを回収して攻撃に転じるという意味ではまだまだ工夫が必要だろう。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。