久保建英、芝状態一任の「ボス」になる日が来るか マジョルカの名グランドキーパーを直撃
【スペイン発コラム】久保建英の“庭”を管理するベニート・マテオさん
今回は、スペイン1部マジョルカの日本代表MF久保建英の“庭”になっているソン・モッシュ、現在の呼称でビジット・マジョルカ・エスタディの芝について扱おうと思う。ここで登場するのがグランドキーパーの責任者であるベニート・マテオさんだ。
この人物、ルイス・ガルシア・プラサ監督のソーシャルネットワークで数回登場しており、そこでは練習場でバーベキューやパエリアの火加減を見ている。どこにでもいそうな陽気なおじさんだが、実際のところそうではない。マジョルカでともに仕事をし、インテル(イタリア)へ移ったエクトル・クーペル監督に請われてジュセッペ・メアッツァの整備担当となり、さらにバレンシア、マラガ、さらには河北(中国)のピッチ管理してきた人物なのだ。
マテオさんとそのスタッフの仕事ぶりが広く評価されたのは2013年10月のワールドカップ予選、スペイン対ベラルーシ戦(2-1)のことだった。前日、さらに当日の豪雨で試合開催が危ぶまれるほどだったが当日は水たまり1つないピッチコンディションで問題なく試合が開催された。
「あの時は前の晩から雨が降り続き雨量は多かった。当時の代表監督はルイス・アラゴネスでどうしても日程どおり試合消化したいということだったのだが、我々としては10分雨が止めば(芝が)水を吸い込む状態になっていたから心配していなかった」とマテオさん。それまでの行き届いた管理で難局を乗り切った。
現在の芝生は昨年10月から切り替えた冬用で、これはスペイン北部、バルセロナ、バレンシア、アンダルシア南部と地中海一帯のスタジアムで広く使われている。前節レアル・マドリード戦へ向けた準備としては、4日前に通気と吸水性を高める作業を行なった。また試合は現地時間21時の開始で、周囲を海に囲まれたマジョルカの特性から試合当日は準備運動の雨に散水をしただけで、キックオフ直前またハーフタイムには水撒きは行わなかった。また芝の長さはリーグ規定の最長限である30ミリのカットだったという。
水撒きや芝の長さについてはあまりボールがスムーズに転がらないための対策であり、ルールで許されている範囲内で地方クラブが実力的に大きく上回るビッグクラブと対抗するための、わずかながらの抵抗といったところか。もしかすると同試合でマジョルカが前半を0-0で凌いだ1つの理由ということになるかもしれない。
島田 徹
1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。