欧州基準の変化、小柄な日本人CBの需要増も 攻撃の起点&カウンター対応特化の可能性
【識者コラム】かつては180センチ以上がCBの常識、今やチームによって条件も変化
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では16強でベンフィカに敗れてしまったけれども、アヤックスは面白いチームだった。
センターバックのリサンドロ・マルティネスとユリエン・ティンバーのコンビは、2人とも身長が180センチに満たない。CBとしてはかなり小柄な部類だ。アヤックスはこの小柄なCBコンビがパスワークの起点になっていた。
アンカーのエドソン・アルバレスと2人のCBでトライアングルを作り、CBのどちらかがフリーになったところから縦パスが供給される。グラウンダーで速いパスをビシャリと前方につけていた。左利きのマルチネスは、対角のロングパスを右ウイングのアントニーに届けることもできる。前方へのクサビと対角のロングパス、どちらもボールの質が素晴らしく、現代サッカーでCBの配球力が決定的に重要だということを印象づけていた。
シャビ・エルナンデス監督が率いるバルセロナも、アヤックスと似たビルドアップのオートマティズムがある。CBからインサイドハーフ、センターフォワードへの縦パスが攻撃のトリガーになっているのだが、CB右側のロナルド・アラウホからのパスがけっこう引っかかる。シャビ監督は「カンテラーノではないからね」と話していて、守備力で頼りになるので攻撃面は仕方がないということだろうか。アラウホはバルサBの経験はあるが、育成年代はバルサの下部組織育ちではない。192センチの長身でCBらしい強さが特徴だ。
CBの条件として180センチ以上の体格が常識だった。190センチ以上も珍しくない。高さとパワーはCBの第一条件だった。ただ、チームによっては配球力の方が重要になる場合もある。アヤックスやバルセロナがそうだが、ポジショナルプレーの浸透とともにCBに求められるプレーもかなり変化してきている。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。