遠藤航&伊藤洋輝、低迷シュツットガルトに光明 残留争いへの“ポジティブな材料”とは?
遠藤ら中盤の連係がスムーズに、伊藤をはじめとする4バックも安定
守備におけるバランスとはボールを持っている時のそれぞれのポジショニングから始まる。例えば遠藤らインサイドハーフが守備ラインまで下がってボールをもらいにくるべきなのかという点。下がってくると当然中盤から前のパスの受け手が減るので、パスの出しどころが少なくなる。一方でボールロスト時に自陣に残っている味方選手の数は増えるので対処はしやすくなる。
それだけに、いつ、どんな状況で、何のために下がるのか。下がった場合の優先順位、下がらない場合の優先順位の違いを理解することが大切になる。
その点において遠藤の、インサイドハーフというポジションでのボールのもらい方について、きちんと整理されてきているのはポジティブなことだろう。右サイドに遠藤が落ちてくる時は右SBに入るコンスタンティノス・マブロパノスが高めのポジション。逆にマブロパノスが下がってパスをもらおうとする時は、遠藤がハーフスペースで起点を作ろうとしている。そうした連係がスムーズになってきている。ボールロストから致命的なピンチという場面は大分ケアされるようになってきた。
戦術的なポジショニングや動き方はそれぞれの選手の動きのバランスを整え、崩れないようにするための大切なもの。ただそうやって省エネすることも大事だが、それを上回る動きを見せることも必要だ。それぞれの選手が1.5倍ずつ走れたら攻撃の深みも守備の厚みも間違いなくアップする。
守備でいうと伊藤をはじめとする4バックの連係が落ち着いてきているのもいい。伊藤の相手FWへの当たり方、当たったあとの対処の仕方には成長の跡を感じられるし、フィジカルで上回る相手に吹き飛ばされることがあっても、すぐに体勢を取り戻してボールを奪い返したりする。センターバックでコンビを組むウラジミール・アントンとの連係も試合を重ねるごとに良くなっている。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。