磐田に課せられた「定着と復興」のテーマ 目先の安定+求められる長期的観点の“刺激策”
高齢化や外国籍選手の迫力不足も不安要素
J2に落ちた磐田は、経験値の高い選手たちの補強で活路を見出そうとした。それが功を奏して昇格を果たした側面もあるだろう。だが、暑さとの闘いも増えて来るJリーグで、さらに上位チームとの対戦が控えていることを踏まえると、ベンチも含めて25歳未満の選手が森岡陸1人だけという戦力では苦しい。また、チーム最大の得点源だったFWルキアンが去ったのに、今年はまだ外国籍選手が1度もスタメンでプレーできていないのも不安要素だ。
本来なら伸びしろを持って昇格するのが理想だが、反面、カテゴリーの当落線上にあるようなクラブは、どうしても働き盛りの選手を確保し難くなっている。J1連覇の川崎からも次々に海外へ流れていくほどだから、若い有望株はどうしても上位のクラブへ偏りがちだ。それだけに指揮官には、ある程度リスクを冒してでも若い層を戦力に加えていく覚悟とビジョンが要る。
伊藤彰監督は、後半防戦に回った要因について「相手の前からのプレッシャーに対して、サイドで奪った時にもう少し展開したかったのだが、連続して奪い返されてしまった」と話した。やはり90分間を通した集中力や強度や質の持続は、今後も重要なテーマになってくるはずだ。
磐田には、かつてJリーグを圧倒的に魅力的なサッカーで牽引した歴史がある。もし今年残留を果たしたとしても、その先には定着と復興というテーマがある。それにはおそらく目先の安定だけではなく、並行してもう少し長期的な観点に即した刺激策が要る。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。