マジョルカ、レアル戦勝利の条件は? CL突破と油断、開き直り、久保建英の“ふてぶてしいプレー”に期待
【スペイン発コラム】3月14日に首位レアルと対戦、マジョルカの“番狂わせ”なるか
スペイン1部リーグの下部チームにとってトップリーグで戦っている証しはいくつかあるが、その代表例がホームでのレアル・マドリードとの対戦というのは間違いない。マジョルカにとってそのお祭りが次節、現地時間3月14日に訪れる。もっともチーム状況から楽しんでばかりはいられないし、まともにぶつかったら敗戦は目に見えている。それを承知であえて勝利するため、また日本代表MF久保建英にとってはレンタル元のレアルに自身の存在を最大限にアピールする方法を、弱者への肩入れと希望的観測をふんだんに盛り込んでシュミレーションする。
大前提としてリーガ首位を独走するチームと降格圏まであと勝ち点2の16位のチームの顔合わせであり、絶望的な実力差がある。今月5日、レアルはレアル・ソシエダを4-1で蹴散らしているが、マジョルカはその3日前ホームで(メンバーを落としていた)同チームに0-2で敗れている。誰も予想できない番狂わせが起こるためには本命の不調、言い換えれば気の緩みが最初の条件になる。
この点ではいくつか前向きな要素がある。レアルは上述の上位対戦ソシエダ戦に続き今シーズンの成否を分けかねない一戦、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のパリ・サンジェルマン(PSG)戦を9日に控えている。第1戦を1-0で落としているだけに、ホームの第2戦にすべてを賭けて戦う。
さらにリーガでは前節で2位セビージャとのポイント差が8に広がっている。取りこぼしが許される状況で、マジョルカ戦に続く29節はチーム状態が上向いているFCバルセロナとのクラシコ。CLで逆転勝ち抜けを果たせば、ほぼ間違いなくプロ野球で言う「先発ローテンションの谷間」となり、つまりマジョルカ戦ではここまでベンチを温めている複数選手の先発出場が決定的になる。
マジョルカにとって自力で勝利を掴むためには何がなんでも無失点で凌ぎたいところだ。実際にはリーガ10戦連続(公式戦では13試合連続)で失点中。前節セルタ戦では5バックにシステム変更しながら、さらに相手の退場で1人多い状況になりながらもアディショナルタイムに4失点目を献上して敗れた。楽観的な要素は皆無だが、それでも(無理やり)発想を転換し、相手の油断を促すという点ではこれ以上のデータはないのかもしれない。
とりあえず今週中に打ちひしがれた気持ちを立て直し、ある意味ヤケクソで大一番に向かうしかないのだろう。戦術としては5バックを維持するか、4バックに戻すかというのが現実的な選択肢か。個人的には最終ラインより中盤のアンカー役を増やして相手のパスの出どころを塞ぎ、両サイドバック(SB)とともに相手のサイド攻撃を封じる方が得策だと見ている。ただし現在の戦いぶりを考えると布陣そのものよりも選手たちやチーム全体の気持ちを切り替え、前向きな意識付けをする方が大事だし、難しい任務のように思われる。
島田 徹
1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。