38歳・長谷部誠は「プレーするほうが好き」 試合後の“全力ダッシュ”に垣間見えた現役へのこだわり

5月のB級ライセンス試験に向けてカリキュラムに参加

 一方で、長谷部はクラブが現役引退後のフォローアッププランを提示してくれたことに感謝の意を示しつつ、「マルクス・クレシェやオリバー・グラスナーから、すでに学び始めることができる」とも語った。クレシェはスポーツディレクター、グラスナーはチームを率いる指揮官としてフランクフルトの職務に従事しており、ここに長谷部自身の今後の目標がおぼろげながらも示されている。彼自身は指導者、あるいはクラブ経営などに興味を抱いていて、現状では明確にその道筋を定めていない。

 ただし、下地作りは着々と進行している。欧州サッカー連盟(UEFA)が発給するプロのトップカテゴリークラブを指揮できるS級ライセンス取得までには幾多の試練が待ち受けるが、長谷部はすでにその足掛かりとなるB級ライセンス取得のカリキュラムに参加し、フランクフルト市内近郊のリーダーヴァルトにあるフランクフルト育成アカデミーの施設へ自家用車で出かけていると明かした。

「B級ライセンスの試験が5月に予定されているんです。今は、(その取得講座の中で)みんなと一緒にトレーニングしたり、選手たちのプレーを観察したりしています。でも、その結果、僕はサッカーのトレーニングを考察するよりも、サッカーをプレーするほうが好きなのだと気づきました(笑)」

 その言葉どおり、今の長谷部は次に待ち受ける公式戦へと目を向けている。チームは現在、彼が戦線離脱してからリーグ戦3連敗中で、順位も来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得圏内の4位RBライプツィヒと勝ち点9差の10位(勝ち点31)と徐々に順位を落としている。一方で、今季のフランクフルトはUEFAヨーロッパリーグ(EL)へ出場してベスト16まで勝ち上がり、来週3月10日にはレアル・ベティス(スペイン)との第1戦が控えている。ここから巻き返しを図りたいフランクフルトにとって、長谷部の帰還は純然たる戦力として計算できる。

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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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