J1開幕2節でレッドカード9枚を識者はどう見る? 考えられるカード多発の“3つの要因”
【識者コラム】今季の「激しくフェアに」「危険なプレーには断固レッド」の傾向が大きな要因
J1リーグ第2節までで9枚のレッドカードというのは、Jリーグ30年の歴史を振り返っても記憶にないレベルだ。注意したいのは1つ1つのケースを見ると、それぞれに理由があること。ジャッジするレフェリーも異なるので、それらを無理やり括り付けて原因追及するのは危険だ。
そうしたことを踏まえても、偶然で片付けられない側面もある。筆者はイエローの累積も含めて、カードが多発する要因として大きく3つのことを考えている。
(1)激しくフェアにという基準のもと、危険なプレーには断固としてレッドを出す傾向が強まっている。
(2)スーパーカップのDOGSO(決定的な得点の機会の阻止)見逃しが、よりシビアな判定に影響している。
(3)プレシーズンが短く、コロナ禍の活動制限により選手の目(特にディフェンス側)が揃っていない。
やはり今シーズンの基準という意味で、(1)が最大の要因だろう。これまでなら警告や注意で済まされていたようなシーンでも、危険と見なされればカードが出されやすくなっている。
象徴的だったのが、静岡ダービーのファビアン・ゴンザレスのケースだ。うしろからのボールに対して、磐田FWファビアン・ゴンザレスが左から追い越すFWジャーメイン良に胸で落とそうとしたが、その然中で左腕がプロレスで言うラリアットのような形で、クリアにきた清水DF鈴木義宜の顔に入ってしまった。
ファビアン・ゴンザレスとしては、特に悪気がなかったことは直後の振る舞いやGK権田修一とのやりとりを見ても分かる。ファビアン・ゴンザレスの進行方向と目線を見ても、ボールの落下地点に入ってくる鈴木を視界に捉えてはいなかったはずだ。
ただ、故意であろうがなかろうが、不自然な形であり、打撃そのものより鈴木の転倒次第では脳震盪などにつながりかねない危険なシチュエーションだった。これまでのプレーを見ても、ディフェンスとのやり合いのなかで、ポストプレーの時に腕を広げる癖は母国のコロンビアから習慣づいているものでもあるだろう。
悪気があろうとなかろうと、今シーズンの基準では退場で致し方ないケースだ。その後VARのやりとりが特に見られなかったのはおそらく、主審の視野が確保できており、シーン自体はよく見えているなかで、プレーが退場に値するかどうかの判断をそこで完結できたということだろう。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。