アーセナル冨安が再離脱、ふくらはぎ肉離れはなぜ再発するのか 専門家が厄介な理由を解説「競技生活が短くなるケースも」

怪我で再離脱のアーセナルDF冨安健洋【写真:Getty Images】
怪我で再離脱のアーセナルDF冨安健洋【写真:Getty Images】

【専門家の目】ふくらはぎ負傷の冨安、練習再開後「実は完治していないケースも」

 イングランド1部アーセナルの日本代表DF冨安健洋は、現地時間2月24日に開催された第20節延期分のウォルバーハンプトン戦(2-1)を欠場した。1年間で左右のふくらはぎの肉離れで4度戦線離脱を繰り返している冨安。なぜふくらはぎの肉離れは再発するのか。元日本代表MF中村俊輔(横浜FC)の個人トレーナーを務める芝浦田町スポーツ整骨院・はり治療院の新盛淳司院長が、そのメカニズムを解説してくれた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 冨安はボローニャ時代の昨年2月1日のサッスオーロ戦で左ヒラメ筋を損傷。同4月に右ふくらはぎを負傷。アーセナル移籍後の昨年12月に右ふくらはぎを負傷し、新たに左足のふくらはぎを負傷した。

 1年間で両ふくらはぎを4度も痛めている冨安だが、新盛院長は「冨安選手のふくらはぎの肉離れですが、サッカー界では再発の多さが問題になっています。再発の原因はさまざま考えられますが、負傷初期段階の評価が難しいことが一因と考えてます。腱膜という薄い膜状の組織がふくらはぎは多いので、画像でも傷の具合が診断しづらいことも多い。本人は痛みを感じていないために、練習再開となっても、実は完治していないケースもあります。つまり、4週で復帰できるという軽傷の判断により、実はもっと重症で復帰時期が早すぎたために再発してしまうケースです」と解説する。

 MRIなどの検査では怪我の具合の判別が困難な箇所だというふくらはぎ。診断結果で炎症などの症状が見受けられず、痛みがなくなり、復帰した場合も、実はまだ完治していないというケースがあるという。

「特に初めてふくらはぎを肉離れした場合は、治療とリハビリに時間をかけることが大切だと思います。再発すると、繰り返すパターンになるケースがあるからです。経験的には、負傷して3週から4週で復帰した場合に再発が多く、6週から8週をかけて復帰することが多いです。痛みは2週くらいで消えることが多く、走ったり、ジャンプもできるようになります。選手本人も試合復帰できる感覚になります。それがまた厄介な部分で、いったんは試合復帰できても数か月後に再発したり、かばった逆足のふくらはぎや、ハムストリングなど他の部位を肉離れするケースもあります」

 両ふくらはぎにトラブルを抱える冨安に当てはまる状況と言えるが、ふくらはぎの故障が厄介な理由は、もう1つ存在するという。

「ふくらはぎの肉離れで難しい部分は、軽い運動でも負傷してしまうことです。軽いジョギングやちょっとしたジャンプの着地だけで負傷するケースもあります。ふくらはぎは腱が多く、反射が起こりやすく腱に負担がかかりやすいことが考えられます。リハビリでも、ジョギングを開始する時期を他の部位の肉離れよりも遅く設定して、筋力トレーニングを長く行う場合も多いです」

 パワーをかけたダッシュなどだけではなく、負荷の軽い動作でもふくらはぎの異常は発生しやすいと新盛院長は語る。

「ふくらはぎの故障が原因で競技生活が短くなったり、終わってしまうケースもあります。冨安選手は、負傷を繰り返しているので、まずはしっかり時間をかけて治療に専念する必要があるかもしれません。無事にピッチで活躍する日が少しでも早く来ることを願っています」

 アーセナルで不動のレギュラーとなった冨安だが、新盛院長は再発のサイクルから脱却することを祈っていた。

[プロフィール]
新盛淳司(芝浦田町スポーツ整骨院・はり治療院院長)/柔道整復師、鍼灸師。新浦安しんもり整骨院入船院、新浦安しんもり整骨院今川院代表。柔道整復師、鍼灸師の資格を持ち、関節ニュートラル整体普及協会会員。元日本代表MF中村俊輔をセルティック時代から支える。関東リーグのブリオベッカ浦安のチーフトレーナーも務めている。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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