2部降格“当確”だったビーレフェルトが急浮上 奥川雅也が「プレーしやすい」と語るドイツ人監督の魅力とは?

クラマー監督の下、チーム一丸となって戦う集団へ

 クラマー監督は自分の言葉に正直だ。選手への思いも自然に言葉にする。ウニオン戦で決勝ゴールを挙げた奥川はそれまでの3試合で得点がなかったが、「うまくいっていない時期を選手はどのよう乗り越えるべきなのだろうか?」というドイツ人記者の質問に、ちょっと考えた後、次のように答えていた。

「続けることだ。自分を信じて取り組み続けることだ。マサヤはそれを見せてくれた。どの試合でも同じようにうまくいくわけではない。今日はうまくいった。今シーズン、ずっと見せてくれていたプレーだ。直近の試合では少し違う状況になる試合もあったじゃないか。今日ゴールを決めてくれたことが本当にうれしい」

 そんな監督だからこそ、奥川も自分の良さを出すことに集中してプレーができているというわけだ。2人の関係は言うまでもなく非常に良好だ。ウニオン戦の翌日、広報を通じて奥川がコメントを送ってくれた。

「監督との関係は良好だと思います。僕のプレースタイルを把握しており、僕もプレーしやすいです。練習から100パーセントのプレー、インテンシティーを求められ、日々チーム、個人で選手として成長させてくれる監督ですね」

 ビーレフェルトは24節終了時で勝ち点25の14位。一時期降格圏の17位にいたことから考えると相当に状況は改善されている。ただ、まだこれで残留が確定したわけではない。今季残留を果たすために必要なこととは何だろうか? そのなかで奥川はどのようにチームを助けようとしているのだろうか? 奥川は次のように答えてくれた。

「チーム全員で、走って、守備、攻撃の目標を完結させる意識が大事。個人としては、得点でチームを助けたいし、チームのために走ることが重要になってくると思います」

 クラマー監督がチーム一丸となって戦う集団に育て上げ、奥川がチームを勝利に導くゴールを重ねていく。その先に、2年連続1部残留という大きな成果が待っているはずだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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