実質的なロシアの締め出しも? ウクライナ侵攻によるヨーロッパサッカー界への影響

クロアチアは1998年にW杯3位、2018年に決勝進出と躍進

 一方、ウクライナ代表の今後も気になる。仮にロシアの傀儡政権が樹立した場合、ウクライナ代表はまともに編成できるのだろうか。

 サッカー史上でもスーパーな代表チームだったオーストリア、ハンガリーは紛争の結果解体された事例がある。オーストリアはナチス・ドイツに併合され、ハンガリーはソ連の軍事介入で主力選手たちが亡命して黄金時代が終わっている。ウクライナ代表は独立した1991年に創立され、2006年ドイツW杯では初出場でベスト8。2021年のEUROでもベスト8に進出した。丁寧なパスワークと鋭い攻め込みは旧ソ連時代の長所を受け継いでいる。UEFAのコンペティションで活躍してきたのも、ロシアよりウクライナのシャフタール・ドネツクやディナモ・キエフだった。

 かつて、フランス代表のエメ・ジャケ監督は「新しい旗のチームは要注意だ」と話していた。1998年のW杯でクロアチア代表は旧ユーゴ時代を上回る3位入賞。2018年は決勝進出を果たした。逆にヴンダーチーム(オーストリア)のメンバーを組み込んだ1938年のドイツ代表は1回戦で敗退している。メンタルが影響するところは大きいのだろう。

 新しい旗を立てたウクライナ代表を失うとしたら、サッカー界にとっても大きな損失になる。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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