「板倉がいたら守備は大丈夫」 1部昇格の鍵を握る“リベロ”としての存在感

板倉のカバーリングは絶妙

 そもそも監督が相手チームの選手を名指しで取り上げて、それを勝因として語ることはそんなにある話ではない。それも得点を決めたりするFWではなく守備の選手を、となるとさらにない。さらにそうした話が記者からの質問ではなく、試合のまとめとして最初に監督から話されるとなるとあまり聞いたことがない。

 そのくらい、板倉の存在感は際立っていたのだろう。センターにポジションを移した直後には両ストッパーやボランチとの連携によるズレを修正しきれずに、板倉の両脇スペースへ相手の侵入を許し、危ないシーンを作られることもあった。だが、そこから慌てる様子も見せずに流れの中でしっかりと修正していくのだから凄い。そしてパーダーボルンが繰り広げる素早い攻撃の先にはいつも板倉がいて、ボールをさっと回収してしまうのだから、クバスニク監督もお手上げだったのかもしれない。

 コロナ禍対策でまだミックスゾーンでは対面で話をすることができなかったため、試合後、広報を通じて守備バランスについて尋ねてみたところ、次のような答えをもらえた。

「結果、2-0で終われた。まあズレることも多少はありますけど、守備のバランスのとことかもやりながら修正できていた。明確に自分たちがやることがはっきりしていたので、多少うまくいかないところはあったけど、結果として2-0で追われたところをポジティブに捉えていきたいと思います」

 ドイツでは特に前に出て守ることを要求される。飛び出したら自分のスペースを使われる、という感覚で躊躇してしまうと出足が遅れて、相手の起点を潰すことができないし、逆に不用意に飛び出すことでピンチのきっかけにもなってしまう。どちらの場合も監督やチームメイトからこっぴどく怒られたりする。でも、板倉はそのあたりの状況判断がしっかりと整理されているので、前に出てボール奪取する精度も、とどまってクレバーにカバーリングする精度もどちらも高い。空中戦でもまったく引けを見せない。シャルケがここからの終盤取りこぼしをすることなく昇格レースを勝ち残っていくうえで、盤石の板倉の存在が必要不可欠なのだ。

 そして、シャルケファンは知っている。板倉がいたら守備は大丈夫だと。この試合でも板倉の狙いすましたカバーリングからのスライディングタックルが出ると、大きな歓声が上がっていた。何度も、何度も――。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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