「板倉がいたら守備は大丈夫」 1部昇格の鍵を握る“リベロ”としての存在感
【ドイツ発コラム】後半8分に板倉をストッパーからリベロに移行してリズムを掴む
ヨーロッパに暴風雨が迫っていた2月18日。取材先のシャルケではドイツ2部第23節パーダーボルンとの試合が行われたのだが、ホームスタジアムのフェルティンス・アレーナには、まさにちょうど試合中にその暴風が直撃してきていた。試合終盤には、「少なくとも試合後30分まではスタジアム内で待機をしていてください。外は非常に危険な状況です」とスタジアムアナウンスがあるほどにだ。
ただ、少しざわつきながら1万人の観客は、試合のほうへすぐ意識を戻していく。開閉式のアレーナのおかげで、外の影響をあまり感じずに観戦ができていたというのもあるのだが、ピッチ上では吹き荒れる嵐のように両チームによる主導権争いが繰り広げられていたからだろう。
前半22分にフリーキック(FK)からFWマリウス・ビュルターのヘディングゴールで先制したシャルケに対して、パーダーボルンのスピードのある攻撃陣がシャルケ守備網に襲い掛かってきていた。この日、シャルケの3バックのセンターでスタメン出場していたのはサリフ・サネ。196センチの長身を誇る元セネガル代表センターバック(CB)は圧倒的な制空権を誇るし、足もとの技術だって悪くない。1部リーグでも長くプレーしているだけに状況に応じたポジショニングも取れる。ただ、横の揺さぶりにはそこまで強くはない。前半途中からサネと両隣のCBに生じるスペースに、相手の侵入を許す場面が気がかりだった。
そんな嫌な流れを変えたのが、シャルケのディミトリオス・グラモジス監督の一手だった。後半8分、サネに代えてCBマリック・ティアウを投入し、それまで右のストッパーだった板倉滉をセンターのリベロへと移したのだ。
実際にどのくらいの効果があったのかを、パーダーボルンのルーカス・クバスニク監督が試合後の記者会見で明かしている。
「0-1の後半どちらにも点が入る可能性があった。スピードのあるFWで相手に揺さぶりをかけることができていた。ただ、私から見て今日の試合で決定的な瞬間は、シャルケが板倉のポジションをセンターへ移したことだと思う。それによってシャルケの裏スペースがなくなってしまった。そこを狙えなくなった」
この発言、記者からの質問で生まれたものではない。基本的に監督記者会見というのはアウェーチームの監督がその試合の簡単な振り返りを行うところから始まる。その振り返りのなかで、今日の試合のターニングポイントとして、クバスニク監督が自分から口にしたのだ。