海外クラブでキャプテンを担う偉大さ シュツットガルト遠藤航が重厚なるリーダーたる所以
サポーターからも愛される確信の振る舞い
試合終了後、テレビインタビューを受ける遠藤に向けて、メインスタンドのサポーターから「エンドゥー! エンドゥー!」という掛け声が何度も投げかけられた。遠藤は時折、自らが着ていたユニホームをサポーターに進呈することがある。この日もサポーターが「3」と刻まれた戦士の証をこぞって求めたが、遠藤は茶目っ気たっぷりに着込んだジャージの隙間から中を見せて、「もう、脱いじゃった。アンダーシャツしかないよ」と呟いている。
悔いの残るドロー劇、リーグ戦8戦未勝利。それでもキャプテンは意気消沈する姿を一切見せない。可能性が途絶えるまでファイティングポーズを貫く。歴戦が彼の心根を育む。虚勢ではなく確信の振る舞いが、彼をリーダーたらしめている。
少し遅めにスタジアムを出て、メディア窓口に預けた身分証明用のIDカードを受け取りに行った。どうやら筆者が最後のメディアだったようで、受付の女性が腕組みするように待ち構えている。身構えながら「すみません……」と声を掛けると、厳しい表情を一変させて彼女が言った。
「何言ってんのよ。私たちの選手を観に来てくれたんでしょ。こちらこそ、いつもありがとう。良い週末を。私たち、来週は勝つわよ」
頼もしきキャプテンに牽引されて、赤と白をクラブカラーとする古豪が、来たるべき反攻を期している。
(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。