J1清水の“勢い”に期待 開幕戦で見せた平岡イズム、先発11人日本人の緊急事態にも対応
ダイレクトでパスをつなぐ攻撃に平岡イズム
しかし、前半は5年目となるペトロヴィッチ監督の戦術が浸透したチームに苦戦し、その成熟度の差を見せつけられる展開となった。札幌の速い寄せにボールを保持できずに自陣での守備に追われた。前半6分にはMFルーカス・フェルナンデスに右ポストを直撃され、同15分にはクロスのクリアボールをダイレクトボレーでL・フェルナンデスに今度は決められて先制点を奪われた。
同35分にはペナルティエリア内でDF立田悠悟がハンドの反則を取られPKを献上するが、ここは守護神のGK権田修一のスーパーセーブで追加点は許さなかった。FW興梠慎三のシュートに対して立田がスライディングブロックに行った際にハンドと判定されたもので、判定自体が厳しいものだと感じたが、立田が体を投げ出さなければ興梠のシュートが直接決まっていた可能性もあり、実際にPKを阻止したのは権田だが立田が防いだ得点でもあると思っている。
前半を1失点で抑えたこと、そして札幌のプレスが緩んだこともあるが、後半頭から前線にB・コロリを入れて攻撃の変化を平岡監督は狙った。そして後半10分に白崎、同11分にはB・コロリが決定的なシュートを放つもこちらも札幌の守護神GK菅野孝憲がビッグセーブを連発し、清水の1点は遠かった。それでも昨シーズンとは違い、安易にうしろにボールを回して整えてからの攻撃ではなく、常に前に意識を置き、ダイレクトでパスをつなぐ攻撃には平岡イズムを感じた。
同23分には今シーズに大きな飛躍が期待されているMF鈴木唯人が裏へ抜け出しMF原輝綺からのロングパスを巧みなトラップから札幌DFを振り切り角度のないところからのシュートを決めた。「あそこはお互いが狙っているところなので上手くいい関係が築けている」と鈴木唯は2年目となる原とのコンビネーションに自信を示した。その後にはMF高橋大悟、MF岸本武流などの新戦力を投入したが勝ち越し点は奪えずに試合はこのまま1-1で開幕戦は引き分けで終わった。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。