大迫勇也と共闘のストライカーが復活した理由とは? 相思相愛の2人が好調ケルンを牽引

モデストの移籍話にバウムガルト監督が首脳陣説得「売ることはファンへの裏切りだ」

 そんなモデストが今季ゴールを量産している。23節終了時で15ゴールを挙げ、得点ランキング4位。23節フランクフルト戦では途中出場から見事な決勝ゴールをマークした。

 監督からの揺るぎない信頼が復活劇を支えている。シーズン前、バウムガルトはどのようにプランしているかをしっかりと伝え、そのためには甘えを何1つ許さないと言い切ったという。

 モデスト「監督とは正直にシーズン前に話をすることができた。僕にとって素晴らしいことだよ」

 完全復活へ向けて全力で取り組んできた。昨季終了後にフランスで2度のオペを受けてリハビリを行い、シーズンイン前にコンディションを仕上げて、プレシーズンから調子のいい動きを見せていた。代表中断期に入ると、専任のコンディションコーチとともに汗を流し、さらなるパワーアップを図る。今季ヘディングでのゴールが多いが、それも練習のたまものだとモデストは胸を張る。

 そんな活躍を見せるモデストにこの冬サウジアラビアのアルヒラル・リアッドからオファーが届いた。ケルンとしてはコロナ禍で経営に苦しんでいるという背景がある。移籍金400万ユーロに加え、モデステの年俸350万ユーロを抑えることで相当助かるという事情もある。目の前に総額1000万ユーロ(約13億円)以上となるものがある以上、そう簡単に断ることができない数字だ。

 一方のモデストは、リアッドからの年俸850万ユーロというオファーに果たして心が動いたのか。いや、即座に断りたい意思を表した。同じ過ちを犯すつもりはなかった。

 するとバウムガルトが動いた。「モデストを売ることはファンへの裏切りだ」と首脳陣説得に乗り出したのだ。そして続けた。「欧州への挑戦どころか、モデストがいなければ残留争いに落ち込む危険さえある」と。その後、クラブはリアッドへの断りを正式に表明している。

 信頼する指揮官からのサポートを改めて感じたモデストは、その直後に行われた21節フライブルク戦で貴重な決勝ゴール。ユニフォームの胸にあるケルンのロゴの前でハートを作り、喜びとクラブ愛を表した。

 ヨーロッパリーグの可能性が出てくると大概の監督はブレーキをかける。慌てるな、と。バウムガルトは逆だ。「誰でも夢を見ていいわけだし、自分たちを小さく語るつもりもない。今ある勝ち点は自分たちがいいサッカーをして積み重ねてきたものだ」と、さらに熱くなっている。

 バウムガルトとモデスト。相思相愛の2人を中心にケルンはさらに上を目指している。そんなケルンが今季どこまで上位に食い込めるかに注目だ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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