大迫勇也と共闘のストライカーが復活した理由とは? 相思相愛の2人が好調ケルンを牽引
【ドイツ発コラム】アントニー・モデストの得点力なくして、今季のケルンは語れない
ドイツ1部のケルンが好調だ。
残留争いを毎年戦っていたクラブが、今季はヨーロッパカップ戦出場を夢見ることができるリーグ7位(2月23日現在)につけている。ケルンがヨーロッパの舞台に立ったのは2017年が最後。そして今のケルンは当時以上の戦績をここまで残している。23節フランクフルト戦の勝利でケルンは昨シーズンの全勝ち点をすでに2上回っているのだ。さまざまな要因があるなかで、一番印象深いのはシュテファン・バウムガルト監督の存在だろう。
どんなに寒くてもポロシャツ1枚とハンチング帽子がバウムガルトのスタイル。「試合中は燃えているから寒さなんて感じん」と意に介さず。この熱さこそケルンというクラブ、そして町に必要ななによりのものだった。実際に今季ケルン監督に就任すると、すぐにクラブの空気を変えてしまった。これまでのケルンはどちらかというと守備的な戦い方をしてきたチームだったのだが、バウムガルトはそんな消極的な姿勢を払拭し、オフェンシブな魂を注入した。
その思いは選手起用に色濃く現われている。スタメン表を見ると2トップにトップ下、さらに両サイドのMFもオフェンシブな選手の名前が並んだりする。これまでのケルンだったら考えられない布陣だ。えてしてオフェンシブな戦い方を選ぶと、守備が破綻したり、攻撃的選手同士でバランスが取れなくて上手くいかないことが多いのだが、ケルンではものの見事にハマっている。
どのようにプレーをすることで、勇敢にオフェンシブにチャレンジすることができるのかを明確に提示することができているからだろう。全選手に足を止めずにハードワークすることを求め、妥協することなく試合が終わるまでコーチングエリアから鋭い眼光で選手の動きに目を光らせている。だがそれは強要ではない。選手への熱いサポートなのだ。
そんな指揮官から全幅の信頼を受け、現在誰よりも重要な選手となっているのがセンターフォワードのアントニー・モデストだ。彼の得点力なくして、今季のケルンは語れない。
2016-17シーズン、日本代表FW大迫勇也(ヴィッセル神戸)とのコンビでクラブをヨーロッパの舞台へ導いたストライカーはその後、中国へ移籍。だがここから迷走が始まる。18年11月にケルンへ復帰をするも、負傷の影響もあり、なかなか思うような活躍ができない。魅力だった得点力は影を潜めたまま。シュートがそもそも枠に飛ばない。33歳という年齢もある。モデステは終わったとささやかれた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。