38歳長谷部誠、なぜ異例の5年契約? 欧州トップリーグで日本人指導者誕生への期待感
【ドイツ発コラム】フランクフルトと2027年まで5年契約、引退後は指導者転身か
ドイツ1部フランクフルトでプレーする長谷部誠が同クラブとの契約延長を果たした。
1年ではなく、2027年までの5年契約という驚きの長期契約だ。次の1年間をまず選手として、そして現役引退後は指導者としての契約条項となっている模様。だとしてもキャリア終盤にいる選手とこのような長期契約を結ぶという話は珍しい。
日本人初となる欧州トップリーグでの監督誕生の可能性に向けて注目も期待も、これまで以上に高まってきているのではないだろうか。欧州トップリーグで活躍する日本人選手は増えてきている一方で、指導者はなかなかそう簡単にはいかない。
まず現時点で欧州サッカー連盟であるUEFAとアジアサッカー連盟であるAFCとではライセンスにおける互換性で合意に至ってはいない。日本で、あるいはどれだけアジアで結果を残しても、ヨーロッパのトップリーグでチャレンジするチャンスはないのだ。
それならヨーロッパに渡ってライセンスを獲得してから指導するチャンスを掴むことは可能なのだろうか?
これも果てしなく難しい。ドイツを例に挙げると、ブンデスリーガで指揮を執るために必要なプロコーチライセンス(UEFA-S級ライセンス)を所得するのは至難の業なのだ。僕自身、2009年の段階でドイツのA級ライセンスを獲得しているが、その次のステップはいまだにできない。というのも、プロコーチライセンス受講資格として最初に厳しいラインがあるからなのだ。
(1)ブンデスリーガ~3部まででアシスタントコーチ
(2)ブンデスリーガU17、U19チームで監督
(3)女子ブンデスリーガ~2部までで監督
(4)6部リーグ以上のトップチーム監督
(5)地域トレセン代表
上記したポストにA級ライセンス所得後、最低1年間従事していたという証明がなければならないわけだが、当然指導者として上を目指す人はまずみなこのポストを目標に動き出す。どれだけの数がいるかというと、A級とプロコーチライセンス所得者が加入できるプロコーチ連盟(BDFL)の会員が現在約5200人。BDFLは加盟が義務ではないので、実数はもっと多いだろう。それだけの指導者がこの若干数のポストを虎視眈々と狙い合っている。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。