J1&J2リーグ「ブレイク&再ブレイク候補」を厳選 “19年のMVP”が復活の狼煙、パリ五輪世代の20歳MFは必見
実勢十分のレオ・シルバ、新天地・名古屋で存在感
■MFレオ・シルバ(名古屋グランパス/36歳)
Jリーグではアルビレックス新潟、鹿島アントラーズと渡り歩いてきた実績十分のブラジル人MFは、守備強度と前につけるパスで存在感を示し、主軸であるMF稲垣祥と攻守をコントロールしながら新天地での開幕戦勝利を支えた。サイドアタックがベースになる名古屋において中央からの展開が生命線になるが、稲垣が攻め上がる時は中央でバランスを取り、レオ・シルバが持ち上がれば稲垣が背後からサポートするなど、隙を見せなかった。ハイプレスのフィルターとしても機能しており、J屈指の強度を誇る稲垣とのコンビは対戦相手を苦しめそうだ。
■DFエンリケ・トレヴィザン(FC東京/25歳)
“多摩川クラシコ”はアルベル新監督の率いるアウェーのFC東京が健闘。終盤に川崎FWレアンドロ・ダミアンのゴールで1-0の敗戦となったが、今後に向けてポジティブな試合だった。しかし、序盤20分間はパスワークがうまく機能せず、ハイプレスの裏を突かれる場面も。3失点ぐらいしてもおかしくない窮地で、川崎に立ちはだかったのが新加入のGKヤクブ・スウォビィクとエンリケだった。危機察知能力が素晴らしく、シュートコースを確実に遮断するブロックや鋭いレスポンスなどを存分に発揮。勇敢に前から戦ったチームを支えた。球際に強いDF木本恭生との相性も良く、DF森重真人が復帰してきた場合も指揮官は良い意味で悩みの種になりそうだ。
■FWチアゴ・アウベス(ファジアーノ岡山/29歳)
ヴァンフォーレ甲府との開幕戦では、自陣でボールを拾ったところからの左足ロングシュートを決めると、さらにMF河井陽介からのパスを華麗に浮かせて右足ボレー。“チアゴ・アウベス・ショー”とも言える数々の妙技で4-1勝利の主役となった。周囲とのコンビネーションも良く、岡山の新たな“王様”になっていくことを予感させるどころか、確信させるパフォーマンス。木山隆之新監督の下、悲願のJ1昇格を目指す岡山はブラジル人助っ人とともに、最高のスタートを切った。
■MF伊藤涼太郎(アルビレックス新潟/24歳)
非常にハイレベルな攻防の末にスコアレスドロー終わったベガルタ仙台戦で、伊藤は4-1-2-3の右インサイドハーフに入った。左インサイドハーフのMF高木善朗は事実上のフリーマンなので、アンカーのMF高宇洋とバランスを取りながら局面でキープ力や展開力を発揮。前線がボールを失った直後の即時奪回でも大きく貢献した。アタッカーのイメージが強かったが、新天地で攻守の万能性を示したのはチームにも個人にも大きい。さらにゴールに絡む働きが加われば申し分ない。浦和レッズから移籍する際に「僕はこのまま終わりません」とコメントしていた伊藤だが、真のブレイクを果たすためのポジティブな船出となったはずだ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。