「このままではダメ」 長谷川唯が考える世界との差…なでしこジャパンに足りない「個人としての戦術理解」
W杯で誓うリベンジ「いい仕事をして、レギュラーとしてチームを引っ張る」
――アンダー世代とA代表の違いというのは、具体的にどういうところがあるのでしょうか?
「戦術理解というか、全体でどうサッカーを進めていくかのところです。チームにもよるのですが、ヨーロッパの強豪は戦術のところもすごく進化していますし、本当に戦術が浸透しているクラブチームには、浸透していると見ていて感じます。今後、これがクラブチームだけではなく、国の代表チームでも、やってくるチームが出てくるはずです。そういう意味では、どこにスペースがあって、どこのポジションの相手がボールに来たから、ここのスペースが空くということの共有が必要です。全体で、一人ひとり全員が分かっていないと、上手く進められないなというのはすごく感じました。もともと感じていた部分ではありましたが、なかなか上手くいかないシーンが増えてきて、さらに強く感じたので、そこはチームとしての課題になりますが、個人としての戦術理解、頭の整理は、すごく大事なことかなと思います」
――戦術理解が遅れている選手がいたら、「ここに動いてほしい」と示すようなプレーも必要になってきそうですね。
「そうですね。ただ、やっぱり全く同じシーンというのは出てきませんし、ボードや机上では簡単に説明できていても、プレーしていると見えない部分も多くあります。そこは一つひとつのプレーが終わるたびに話すこと、お互いに意見を言い合えるような関係を作ることが大切です。意思疎通が一方通行にならないように、お互いがちゃんと話せるようにすることは、年齢も上がってきていて、すごく感じていることではあります」
――海外で大きな刺激を受けていることが伝わってきますが、WEリーグができた年にあえて海外に行ったのは、どういう思いがあったのでしょうか。
「タイミングとしてはたまたまです。もともと海外でやりたい思いがあって、そのなかでちょうどこの数年でヨーロッパのチームに、男子のようなサッカーが浸透してきていました。自分がずっと海外に行きたかったなかで、ベレーザで永田監督に出会って、サッカーの見方が変わり、『日本ではやり切ったな』『もう日本じゃないな』と思ったのがこのタイミングで、そこにWEリーグの開幕が重なった感じでした」
――実際、海外に行って良かったと感じていますか。
「もちろん、『来て良かったな』というのはありますが、日本でやっている選手がみんな海外に出たらいいとは思っていません。イギリスでもレベルの高いチームでは、戦術が浸透していますが、中位から下位のチームには、そうではないチームもあると感じています。戦術面では、日本でしっかりとやるべきことをやって、日本でできることをすべてやってから、海外に出ることがベストだと個人的にすごく感じています。ヨーロッパでは、戦術に関係なく、対人のところは求められますし、タックルも本当に深くて、日本と全然違う部分があります。国際大会で戦う相手は世界の選手であって、日本人ではないので、その意味で海外に出ることはいいと私は思っています」
――では、最後にW杯への意気込みを聞かせてください。
「前回のW杯では、初戦で怪我をしてしまったこともあって、すごく悔しい経験をしました。怪我をしてしまった部分を含めて、まだまだだなと感じました。今回、出場権を獲得したからにはメンバーに入って、前回のW杯よりもいい仕事をして、自分がしっかりとレギュラーとしてチームを引っ張っていける選手になりたいですし、日本の皆さんに応援してもらえるチームを目指して、この1年しっかりやっていきたいと思います」
[プロフィール]
長谷川唯(はせがわ・ゆい)/1997年1月29日生まれ、宮城県出身。戸木南ボンバーズ少女サッカーチーム―戸田南FCスポーツ少年団―戸木南ボンバーズFC―日テレ・メニーナ―日テレ・東京ヴェルディベレーザ―ACミラン(イタリア)―ウェストハム・ユナイテッド(イングランド)。豊富な運動量と抜群のテクニックを兼ね備え、なでしこジャパンの攻撃を牽引するアタッカー。