なでしこジャパン長谷川唯が女子アジア杯を回想 「日本のサッカーが世界一になる道」とは?
日々変化するサッカーへの危機感、大きな波に日本も乗れるかどうか
――韓国戦では長谷川選手が中央に入り、植木理子選手と縦関係になっていました。その位置でのやりやすさや植木選手との連係はどんな手応えでしたか?
「どの選手とプレーする時でも、もう1人がどういう位置を取っていて、どこに動いているのかを確認しながら、その人の特長にあったプレーを心掛けているつもりです。理子の特長としては、張ってキープすることよりも、裏に動き出すところやスペースに抜けて行って、そこで1対1を仕掛けることが特長だと思っています。その動きで最終ラインを引っ張っていってくれる分、自分のところがすごく空くと感じたので、特に前半はやりやすくて、チャンスも作れていたかなと思いますが、本当に最後のところが、足りなかったと思います」
――韓国戦は引き分けに持ち込まれましたが、次のタイ戦ではゴールラッシュを見せました。韓国に勝ち切れませんでしたが、それほどチームが落ち込むことはなかったのでしょうか?
「もちろん試合直後には、悔しい思いやモヤモヤしたところがありました。でも、決勝トーナメントへの切り替えが、すごく上手くできました。グループリーグだったこともあり、『次からが本当の負けてはいけない勝負だ』と思いましたし、さらに女子W杯の出場権も懸かった試合だったので、韓国戦をいい意味で忘れて、しっかり次の試合にフォーカスできたと思います」
――タイ戦では、序盤に岩渕真奈選手のPK失敗もあって、また先制点までに時間がかかりました。試合に入ってからは、どんなことを考えていましたか?
「サイドがずっとフリーだったというか、サイドバックが常に高い位置を取ることができていて、それに対して相手も修正してきませんでした。サイドから、ずっと行けている状態だったのですが、でも、クロスからなかなか点が入らない。『これが正解なんだけど、点が入らない』という状況でした。私はサイドハーフにいたのですが、サイドバックが高い位置を取れるので、中に絞ることを意識していたんです。それによって、ボールに触る機会は少なかったのですが、クロスまでは行けていたので『これで合っているかな』という印象で、そのまま攻め続けました。
特に2点目のブチさん(岩渕)と(清水)梨紗のコンビネーションで崩せたところは、試合前から話していた形だったので、そこからチームとしても活気づきましたし、あのゴールによっていろんな選手の動きにも変化が出たなと感じました。私は前半で交代しましたが、あの試合の時は、本当に暑かったので、交代する選手やフレッシュな選手が大事だったなか、途中出場した選手たちがいいプレーをして、その意味でチーム全体の力が出た勝利だったと思っています」
――この勝利によって、来年の女子W杯の出場権を獲得することができました。新生なでしこジャパンは今後、さらに強くなっていき、世界一を目指せるという感触はありますか?
「今回、ベスト4で敗退したなかで、いろいろな方から意見をいただきましたし、その声は選手たちにも届いています。まだまだ足りないことも、全員が分かっているなか、自分自身は女子サッカーが変わってきていることも、すごく感じています。その波に乗らないといけません。変化するサッカーに付いていけないと、このまま飲み込まれてしまうという感覚があります。戦術でも、プレーでも、その波にしっかり乗って、これからのサッカーに日本の女子サッカーが付いていくこと。理想は引っ張っていくことなのですが、まだまだ引っ張るところにはいないと思うので、そこにしっかり付いていき、技術で勝っていくというのが、私が見ている日本のサッカーが世界一になる道です。その意味で絶対になれないことはないと思っていますし、食らい付いていかないといけないと思っています」
[プロフィール]
長谷川唯(はせがわ・ゆい)/1997年1月29日生まれ、宮城県出身。戸木南ボンバーズ少女サッカーチーム―戸田南FCスポーツ少年団―戸木南ボンバーズFC―日テレ・メニーナ―日テレ・東京ヴェルディベレーザ―ACミラン(イタリア)―ウェストハム・ユナイテッド(イングランド)。豊富な運動量と抜群のテクニックを兼ね備え、なでしこジャパンの攻撃を牽引するアタッカー。
(FOOTBALL ZONE編集部)