「ハラハラ」ではなく「ワクワク」のシーズンへ 清水の春季キャンプで見えた課題と期待
決定力不足は助っ人組や若手アタッカー陣に期待
そして中2日のキャンプ8日目にはベガルタ仙台と45分×3本の練習試合が行われ、1本目に風の影響もあったがロングボール1本で裏を取られて失点。その後もFKで2失点をして1本目を0-3で終えた。失点シーンについてはそこまで悲観する失点の仕方ではないと思うが、「闘う姿勢やインテンシティというところが非常に欠けていた」と、試合後に平岡監督が強い口調で話していたことがすべてだった。仙台の素早いプレスと球際に圧倒され、終始数的不利な状況を作られていた印象の1本目だった。
それでも、2本目の途中からボランチに入ったMF白崎凌兵とMF竹内涼が試合の流れを変えるプレーを見せてくれた。2018年以来のコンビとなったが、当時のヤン・ヨンソン監督から信頼を得てリーグ戦8位の原動力の1つにもなった。あれから3年を経て2人ともにさらに成長し、4年ぶりとは思えない息の合ったプレーで3失点して動揺したチームを立て直した。白崎は「ポジションはこだわらない。チームのために戦うだけ」と話し、キャンプ中も積極的に多くの選手たちに声を掛け、時には笑顔で、時には厳しい表情でチームを引っ張っている。外国籍選手を含む多くの選手たちからすでに信頼を得ており、権田とはタイプの違うニューリーダーとなってくれるだろう。
また、5年ぶりにキャプテンを外れた竹内も肩書に関係なく、試合ではチームを鼓舞し、練習でも新加入選手や若手選手とコミュニケーションを取り、チームが一丸となれるような立ち振る舞いをしている。責任感が強い性格のため、ここ数年はキャプテンとしてその責任を背負い過ぎた感じもあり、新シーズンはキャプテンを外れたことで逆に竹内本来の良さが出てくるのではないかと期待している。
試合は3本目でようやく対外試合初ゴールとなるFW栗原イブラヒムジュニアの豪快なダイビングヘッドが決まり1点を返したが、3本トータルでは1-3でキャンプでの練習試合は2連敗で終えることになった。平岡監督は「課題がこの時期に多く見つかって良かったと思っている」と前向きに捉えていたが、2試合を通してやはりチームとしての連携不足が目立つ場面が多かった。特に攻撃面については、決定力も含めてここからかなりの上積みが必要だと感じる結果となった。
ただ、昨シーズンのチーム得点王のFWチアゴ・サンタナや、攻撃で違いを見せることのできるFWカルリーニョス・ジュニオがこれから本格的に合流する。そして、A代表に初選出されたMF鈴木唯人やキャンプで唯一の得点を挙げた身長191センチ・体重89キロの未完の大器である栗原、ユース時代からの平岡監督の秘蔵っ子であるMF滝裕太。新加入ではドリブラーの神谷、成長著しいMF高橋大悟など期待の若手アタッカー陣も揃っていることで、そこは解決できると思っている。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。