「ハラハラ」ではなく「ワクワク」のシーズンへ 清水の春季キャンプで見えた課題と期待

鹿児島市内でキャンプを行った清水エスパルス【写真:下舘浩久】
鹿児島市内でキャンプを行った清水エスパルス【写真:下舘浩久】

【J番記者コラム】平岡監督は「ペナルティーエリア内への侵入」を意識した攻撃に着手

 清水エスパルスは1月28日から2月5日の9日間、17年連続17回目となる鹿児島市内での春季キャンプを行った。しかし、キャンプ直前に複数の選手が新型コロナウイルスの陽性判定を受けたために1月24~26日に静岡での全体練習ができずに「リモート練習」に切り替わり、体幹、フィジカルトレーニングが中心となった。この間に予定されていた2つの練習試合も中止となり、キャンプ出発の前日の27日がオフだったため4日間も本来の練習ができずにキャンプへ突入することになった。

 カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本代表メンバーに選出されたGK権田修一を含めて、新型コロナウイルス感染の影響とは別の理由によりキャンプに参加できない選手もおり、本来であれば全選手34人のところ21人でキャンプがスタート。直前に全体練習ができなかったことで選手個々のコンディションに違いがあり、まずはその4日間の遅れを取り戻すことになった。午後に鹿児島へ到着した初日の練習は宿泊先のホテル内で軽いストレッチなどで体を動かすだけの予定をしていたが、それを変更してホテルから車で20分ほどの練習グラウンドである「鹿児島ふれあいスポーツランド」へ移動してボールを使ってのトレーニングまで行った。

 平岡宏章監督は「開幕までに間に合わなくなる可能性がある。このキャンプでギアを1段階ではなく2段階上げて行く」と話した。2日目の練習で取り組んだのは昨年の反省点でもある「ペナルティーエリアへの侵入」を意識したものだった。サイドを起点とした攻防から、ペナルティーエリア内へクロスを入れてのシュートやパスでディフェンスラインを崩しての決定機を作る練習。まだまだ形にはならなかったが、キャンプでの最初の本格的な練習が「攻撃」を意識させたことは平岡監督が新シーズンのチームに「守ってばかりでは勝てない。攻める意識、得点を獲って勝つサッカー」を目指すことのメッセージだと受け取った。

 しかし、3日目の1対1の練習でボランチの核と考えられるMF松岡大起が右足首を負傷してしまう。翌日からは痛々しい松葉杖姿となったが、キャンプ最終日には松葉杖を使わずに自力で歩行しており、開幕戦には微妙だがそこまでの大事には至らなかったのではないか。また、この日の午後には入国後の隔離期間が短縮されたFWチアゴ・サンタナが合流。翌日には日本人3選手も合流することができた。それでもキャンプでは11対11の紅白戦も行うこともできず、ここまでフルピッチの実戦練習は公開練習の中では1度だけだったが、キャンプ5日目にようやく今年初の対外試合となる3年ぶりにJ1に復帰したジュビロ磐田との練習試合を行った。

 45分×3本から30分×3本に変更となった試合は、1、2本目は両チーム無得点となり、3本目の終了間際に自陣でMFホナウドが雨のために足を滑らせてボールを奪われ、そのまま磐田にゴールを決められる展開で初の対外試合は無得点で終わり0-1の敗戦となった。ただ、磐田はキャンプ12日目ということもありキャンプの疲れがあったのかもしれないが、すでに練習試合も2戦を消化しており、清水よりも仕上がりが数段上のはずの相手に対して内容的には勝りチャンスの数も清水のほうが多かったことを考えれば、悪くはない内容だった。DF立田悠悟が「やろうとするサッカーが少しだが見えた試合となった」と語った一方、DFヴァウドは「初めてにしては良かった部分はたくさんあった。チャンスもたくさん作れたが課題としてはやはりフィニッシュのところ」、新加入のMF神谷優太も「もっと最後の部分にも拘ってやらなければいけない」と攻撃面の課題を挙げる選手が多かった。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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