目標は「RIZIN出場」! 42歳で格闘家転身→デビューから3連勝、元Jリーガーが歩む唯一無二のセカンドキャリア
21年4月の格闘家デビューから3連勝
格闘技の祭典として広く知られる「RIZIN」(総合格闘技ルール)出場を目指すと公言して2021年に格闘界へ飛び込んだが、個人競技に変わってスケジュール・プランを自分で組めるようになった反面、当初はノウハウもなく、公園を走ったり、サッカーのメニューを取り入れたり、手探りの孤独なトレーニングが続いた。
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転身から約2か月、安彦は登山家の栗城とともに親交の深かった元プロボクサーの世界チャンピオン木村悠の紹介で、元K-1ファイターの小比類巻貴之が指導する格闘技ジム「小比類巻道場」に入門。ステップや防御の基本、パンチやキックの種類確認、ミットやサンドバッグ打ちなど、初めて本格的なトレーニングで汗を流した。サッカーと格闘技では、求められる筋肉、能力が違うことは想像に難くない。
「サッカーと格闘技では、筋肉のバランスが真逆。格闘技では足を上げて蹴るので少しシャープになって、上半身は肩回りや脇腹がゴツくなる感じです。ウエイトを使っての筋トレはあまりせず、どれだけ走り込めるか、どれだけサンドバッグを叩けるか、オーソドックスなトレーニングを徹底しました。パンチが苦手だと思っていたら、右のストレートが強いと小比類巻さんに言ってもらえて、ほかにも身体を回転させながら裏拳を打つバックハンドブロー、前蹴りが意外にも得意でした。逆に、難しかったのはミドルキック。サッカーだと腰よりも上に足を上げるタイミングはあまりないので、“上げる難しさ”はありました」
21年4月16日には、小比類巻道場が主催するエグゼクティブ向けキックボクシングイベント「EXECUTIVE FIGHT~武士道~」で、ヘッドギアを付けてのアマチュア戦(2分×2ラウンド/キックボクシングルール)ながら格闘家デビュー。38歳の会社役員相手に計3度のダウンを奪い、KO勝ちでセカンドキャリアの初陣を飾った。安彦は、「本能に任せている感じで、闘っている時の記憶はほとんどないです」と当時を振り返る。
「正直怖かったし、不安もたくさんありました。でも、自分には闘争心が思ったよりあると思いました。本能、闘争心、どちらかと言えばサッカーでは見えなかったものが、格闘界で見えてきた。今考えると、サッカー選手の時にもっと感情豊かに、吠えて、プレーすべきだったと思います」
安彦はその後も、8月に格闘技経験を持つ40歳会社役員、12月にテコンドーの19年全日本ジュニア王者の17歳を破ってデビューから3連勝。大晦日のRIZIN出場は叶わなかったが、上々のデビューイヤーを送った。44歳の年齢は格闘界では決して若くなく、ハンデと見られても不思議はない。ただ、安彦自身は身体のキレはサッカー選手時代よりもいいと話す。
「体調を崩すと元に戻すのが難しいのは間違いないし、体力測定で20代の選手と数値を競えば差は出ます。でも、魂や生き様も含めたトータルなら、身体の状態は非常にいいです。(Y.S.C.C.横浜時代の)シュタルフ(悠紀リヒャルト)監督も僕の戦いを見て、『この動きだったら、絶対にサッカーで得点を取れたよね』と言ってくれたくらい。自分は格闘技と相性がいいのかもしれません」