フランクフルトの豪州代表アタッカー、今冬移籍濃厚→一転主役へ 士気を低下させなかった指揮官のマネジメント術
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【ドイツ発コラム】フランクフルトがシュツットガルト戦で2022年リーグ初勝利
MF長谷部誠とMF鎌田大地が所属するフランクフルトは、ブンデスリーガ第21節でMF遠藤航とDF伊藤洋輝がプレーするシュツットガルトと対戦。今年に入ってまだ勝ち星がないチーム同士の試合は、フランクフルトの勝利(3-2)で終わった。
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主力の鎌田とMFフィリップ・コスティッチを欠き、さらに試合中にはキャプテンのMFセバスティアン・ローデをはじめ、MFジブリル・ソウ、長谷部という中心選手が次々に負傷退場するという苦しい展開に。それでも粘り強く3-2で試合を終えられたのは、オリバー・グラスナー監督によるチームとしての確かな狙いがあったからのようだ。
試合後の記者会見でグラスナー監督は次のように答えている。
「相手守備のライン間でパスを引き出してくれるダイチがいなかったので、シュツットガルトに少しボールを持たせて攻めさせようと考えていたんだ。後ろから前線へロングボールを(サーシャ・)カライジッチへ当ててくると思っていた。
うちのハセベとは身長差でミスマッチを作られてしまうだろうし、そうしたシーンは前半何度かあった。ただ、シュツットガルトは守備の準備をすることなく、リスクをかけすぎることがある。だからボールをうまく奪ったらチャンスを作れるだろうし、そのために前線にスピードのある(ラファエル・サントス・)ボレと(イェスパー・)リンドシュトロームを並べたんだ。
外からのクロスは合わない。FWにサイズがないからね。だからグラウンダーのパスで崩していこうとしていた。最後のところで勿体ないミスでシュートに持ち込めなかったこともあるが、選手はいいプレーを見せてくれたよ」
身長2メートルのカライジッチと180センチの長谷部との競り合いはあまりに分が悪いとも思われたが、逆にそこを狙わせるようにしてセカンドボールをうまく回収できれば素早くカウンターに持ち込むこともできる。
それに長谷部はただやられるだけの選手ではない。ヘディングで競り合う前にタイミングよくぶつかってカライジッチを飛ばせず、工夫を見せていたのはさすが。そしてグラスナー監督の目論見通り、相手のミスパスを誘発し、素払い攻撃からあわやのシーンを何度も作り出していた。
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中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。