マジョルカ“大型化”、久保建英に追い風 冬補強で“有数の掘り出し物”発掘、攻撃オプション増加
【スペイン発コラム】194センチの長身FWムリキが存在感、早くも“救世主的”扱い
2022年1月の移籍マーケットを経てマジョルカの新たな戦力が出揃った。それぞれの分析とチームの変化、それに伴う日本代表MF久保建英への影響を考える。
結論から言うと、マジョルカは両ボックスに強いチームへ生まれ変わった。最前線と最後尾に長身選手が加わり、いずれも加入から2試合でチーム内外を納得させる働きを見せたことで今後主力になると考えられる。
最初に加わったGKセルヒオ・リコ(←パリ・サンジェルマン/PSG)は加入前から活躍が期待されていた。セビージャ、フルハム、PSGでプレーし、本来なら金銭的にマジョルカには手の届かないレベルの選手だが、ジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア代表)、ケイラー・ナバス(コスタリカ代表)の陰に隠れ出場機会を求めていた。
マジョルカでは正GKマノロ・レイナが不安定な出来から複数試合で勝ち点を落とし、また新加入のドミニク・グレイフ(スロバキア代表)は複数の怪我で事実上シーズンを通じて戦線離脱の状態。下部組織選手のレオ・ロマンが先発した試合もあり、GK陣は頭数、レベルともに不足していた。需要と供給が一致し、今冬市場で有数の掘り出し物を手にしたことで後方の安定感が高まるだろう。
続いてサプライズと言っていいのがラツィオから加わったコソボ代表FWベダト・ムリキだ。スポーツディレクターのパブロ・オルテイス氏にとっては「第一候補ではなかったが最後のそれでもなかった」という194センチの長身アタッカーだが、ルイス・ガルシア監督は「ボックスで勝負するFWで、今までチームにいなかったタイプ」と評した待望の新戦力。リーガ第23節カディス戦でPKから決勝点を決めてチームを勝利に導くとともに、指揮官の背後にちらついていた解任の危機を振り払った。
2月2日の国王杯準々決勝ラージョ・バジェカーノ戦(0-1)では加入後すぐに先発フル出場。22回の空中戦のうち15回に勝利しており、マジョルカの地元紙「ウルティマ・オラ」によるとこれは今季の新記録だという。続くカディス戦でも連続先発。高さに強いだけではなく、足元のボールコントロールや他選手との連係でも好シーンを演出した。ガルシア監督が試合後、「前半のプレーは今季一番」と振り返るチームで欠かせない存在であり、メディアの中には早くもムリキを救世主的に扱っているところもあるほどだ。
考え方次第では、怪我で開幕戦以降出場がなかったDFアントニオ・ライージョの戦線復帰も戦力補強と言える。主軸の復帰により守備力の向上とチームの精神的な支えになるだろう。
最後の加入選手、CAペニャロールから移籍したウルグアイ代表DFジオバンニ・ゴンサレスは基本的に右サイドバックとしての戦力になる。右MFとしての起用も考えられ、その場合は久保とポジションが重なる形になるが、スピードとハードな上下動を特徴にするタイプで、久保とは異なる強みとなる。監督が新加入選手の特徴を見極め、試合状況に応じて使い分けると考えられる。
島田 徹
1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。