「日本がうらやましい」 W杯出場消滅の中国、関係者が嘆く育成システムの“弱点” 学業成績、人間関係も課題
中国文化に沿ったオリジナルのサッカー育成システム構築が必要か
「やはり、勉強への保護者の熱意が日本とはまったく異なります。私のサッカー部へは成績が悪い子は入れません」
このように話すのは、中国で蘇州康力サッカークラブを経営、自らも指導者として活躍されている浅野伸太郎氏です。多くの人が口にする中国サッカー育成面での問題点について、最前線で仕事をする浅野氏はこう指摘します。
「保護者の方々は、小学生の段階から学業での成績を厳しく子どもに求めます。なので、私のクラブが指導をしている小学校のサッカー部には成績不良の子は入れません。お断りしています。選手にやる気があっても、必ずあとに保護者の方や学校の先生らの介入があり、その子はサッカーを辞めてしまいます。これで何度も揉めてきましたので、今は学業の成績が一定水準ある子のみとしました。
また、サッカーでも人間関係が求められすぎる点はあるかと思います。中国の人間関係を大切にする文化は良い面も多々あります。しかし、オーナーと仲がいい選手がプロになったり、高待遇を得たりと、選手もそれを理解しているがゆえ、そこに注力しすぎてしまう点も難しい部分かと思います」
大学受験を頂点にした中国の受験戦争、その影響からサッカーを諦めてしまう子供たちや、グラウンドでの努力でなく人間関係構築に重きを置く選手たち。どちらも良い悪いはなく、勉強に注力させる保護者の気持ちや、生き残るための行動をしている選手たちのことは十分に理解できます。
やはり中国サッカーの発展には、単に日本やヨーロッパの育成システムを輸入するだけでは難しく、うしろにある中国文化に沿ったオリジナルの中国式サッカー育成システムが必要なのかもしれません。
(久保田嶺 / Rei Kubota)
久保田嶺
1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。