日本代表3つの謎 ファンの誰もが感じる「なぜ?」 膠着上等、南野との関係性、相互依存の既得権益が鍵
謎2:長友と大迫はなぜ全試合先発なのか?
フィジカル強めの面々の中でも全試合先発の長友、大迫にはそれぞれの理由がありそうだ。ついでに最初の2試合以外にすべて先発している南野拓実を絡めると、この3人の先発起用はだいたい説明がつく。
まず、森保監督は前記のとおり膠着状態を想定している。メインの攻撃パターンはカウンターアタックだ。快足の伊東が外せないのはこのためであり、浅野琢磨、前田大然、古橋亨梧が交代メンバーとして重宝されているのも納得できる。
大迫はカウンターの際に前線でキープできる選手だという理由が1つ。もう1つは南野と関係がある。大迫はライン間でパスを受けるのが上手い。しかし、ライン間で受けて前を向いてドリブルで仕掛けていくタイプではない。ライン間で受けて、近くに落として、展開するという流れなので、近くに連係できるパートナーが必要になる。それは南野でなくてもいいのだが、ボックスに入って点を取れる選手が望ましい。大迫がフィニッシュできる場所にいない場合があるからで、さらに過去の実績を見てもわかるとおり得点量産型のセンターフォワード(CF)ではないからだ。
一方、南野はライン間で受けるプレーがさほど得意ではない。下手ではないけれど、そこに特徴があるタイプではなく、真骨頂はゴール前のシュートである。つまり、大迫と南野は互いを補完する関係であり、2人で1つみたいなコンビと言える。
で、長友は何なのかというと、南野が中央へ入るので左サイドを使えるサイドバック(SB)が必要だからだ。サイドを駆け上がるだけでなく、駆け下がるスピード、スタミナが必須。全盛期からはかなり落ちてはいるが、この上下動において依然として第一人者という認識が森保監督にはあるのだと思う。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。