キャプテン遠藤航のボール奪取減少が影響? シュツットガルト17位大苦戦、伊藤洋輝の高精度キックに光明
違いはミス後の対応 まさに一瞬の出来事だが…それが違いとなってしまう
シュツットガルトのプレーがすごく悪いということはない。正直フライブルク戦も、その前のライプツィヒ戦もゴールを決めるチャンスも、試合の流れを自分たちに引き寄せるチャンスはあったのだ。「嫌なところでミスパスをしてしまった」という指摘もあるが、それこそフライブルクだって致命的になってもおかしくないミスパスをしていた。
違いとして挙げられるのは、そうしたミス後の対応だろう。フライブルクはミスがあった時、瞬時に全選手が帰陣して大怪我を避けることができていたが、シュツットガルトはそこでの対応が一歩遅れていた。
最初の失点シーンがそうだった。ミスでボールを失ったところからフライブルクにカウンターを許し、誰がどこでどのように守るのかが整理される前にゴール前へと運ばれ、ミドルシュートから失点。このシーンでは、必死にクリアしようとした伊藤の足に当たって方向が変わったシュートがゴールへ吸い込まれるという不運に加え、その直前にPKだと思われたシーンがビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で取り消しになったというショックもあったが、だからといってあそこまで持ち込ませてしまったところに問題を抱えている。
2失点目も一見イージーな浮き球に対して、センターバック(CB)のヴァルデマー・アントンと伊藤が一瞬お見合いのような状況になり、いち早く対応したFWエルメディン・デミロビッチのヘディングパスを受けたFWケビン・シャーデが抜け出して右足で叩き込んだ。
「最後尾の選手がヘディングにいく場合は、他の選手が後ろに下がってカバーの準備をする」という鉄則があるが、そうした状況を認知し切れなかった。アントンと伊藤もそうだし、逆サイドのCBコンスタンティノス・マブロパノスだって、足を止めてしまっていた。一瞬の出来事。でもそれが違いとなってしまうのだ。
監督のペジェグリーノ・マテラッツォ監督もそこを指摘していた。「PK取り消しから60秒後に失点。不運だと捉えているのか?」という質問に対して、次のように答えていた。
「そう捉えるべきなのか。確かに不運なシーンだったと思う。でも、失点後も時間はあったんだ。後半の我々は十分ではなかった。自分たちの流れを作り出すことができなかった。2失点目は防げるものだった。あれがなければ最後まで試合は分からなかった。あの60秒は確かに決定的なものだが、それだけが原因ではない。それ以外の展開に持ち込むこともできたのだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。