久保建英のキーワードは「謙虚」 マジョルカ試合実況担当が語る横顔、日本の反響に驚き「YouTube視聴数は大きく違う」
マジョルカで一線を画す久保の“影響力” 試合実況担当者も証言「日本からの期待を感じる」
スペイン1部マジョルカのYouTubeチャンネルを始めとするクラブのSNSが日本代表MF久保建英を中心とした構成になっているのは、ファンなら誰もが知っていることだ。その担当者の1人で、クラブ公式チャンネルでの試合中継に加え、選手がリハビリをしていた時などにビデオレポートやインタビューなど、久保と何度もやりとしているダニ・バルハコバさんに話を聞いた。(取材・文=島田徹)
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――実際のところタケ(久保建英)はチームで一番メディア注目度が高い選手。彼がピッチにいる時、またはいない時にその違いを感じる?
「そうだね。彼はほかと一線を画す形で注目度があるし、特に日本からの期待を感じる。タケが試合に出場した時としていない時では、クラブのYouTube視聴数は大きく違う。彼が怪我して練習もできない状況では、関心は薄れていなかったと思うけど、視聴数はかなり落ちた。逆に彼が出場し、得点やアシストをした時にはとても大きな形で数字として出てくる」
――日本からの注目度の高さは期待していたもの? それとも予想以上だった?
「ある部分ではそう。前回、彼がマジョルカに在籍していた時から引きの強さがあることは分かっていた。日本ではマジョルカの試合がレアル・マドリードやバルセロナのそれよりも見られていたんだからね。その時に彼の影響度の高さを我々は理解した。そして今季、彼はさらに成長し、2年の経験を積んで、チームでもっと重要な存在になり、知名度も上がり、代表でより重要な役割を担うようになっている。それらはもっと大きなものになって我々にも分かる形になっている」
――同時にあなたは今季最も選手にインタビューしている人でもある。彼をどう見ている?
「まず彼はとても礼儀正しく、他人への尊敬の気持ちがあり、若いけど頭の中がとても整理されていて真面目。それにとても正直。言いたいことが明確にあってそれをはっきり言う。また時に20歳の少年らしい一面も見せる。その場面を楽しんでいたり、皮肉を言ってみたり……。距離感が近く、謙虚なタイプで、インタビューしていて楽しいよ。もしかすると謙虚というのがキーワードかもしれない。レアル・マドリードに所属していて、日本代表で重要な存在の1人ではあるけど、地に足がついているという印象だね」
――選手が怪我をしているリハビリ期間中の様子など、関係者しか知らない場にも居合わせている。彼の人間性が窺えるような場面もあった?
「レアル・マドリード戦で彼が負傷した時のことを覚えている。まだ怪我の詳細が分かっていない段階の、ホテルへの帰りのバスの中で彼が一番落胆していたのは、試合に出られなくなるということだった。『なんだよ、今、先発でやっているところなのに』って。怪我から戻った時に自分の居場所はあるんだろうか、という気持ちがあったのだろう。それは彼の謙虚さを示すものだと思う。だって彼は不動のレギュラーで事実上ポジションが確保されていたけど、彼はレギュラーという感覚はなく毎日しっかり練習して監督を納得させなければっていう気持ちがあったんだから。これも彼の謙虚さを示すものだろうけど、その後リハビリ段階に入ってからのことだが、彼は自分1人がカメラに追われるのを望んでいなかった。クラブがリハビリのレポートをするのなら、怪我をしたほかの選手のことも録画しないと、と言っていた。自分が特別で一番重要な存在ではなく、チームやグループの一員になることを望んでいたんだよ」
――試合実況で選手がゴールを決めた時に備えて特別なフレーズとか、「これ言ってやろう」と準備している表現はある?
「考えることはあるけど、実際のところとても難しい。だっていつ、誰が、どういう状況でゴールするか分からないから。だから、どれだけ準備して『これが言いたい』って思っていたとしても、その瞬間に自分の口から出てくるのは別のものだったっていうことはよくある。この間、国王杯で彼がフリーキックで決めたゴラッソの時は『タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、ターーーケ・クボ』って叫んだ。まるでピストルを連射して感情を爆発させている感じというのかな。これから先、もっとこのシーンが繰り返されるのを願ってるよ」
(島田 徹 / Toru Shimada)
島田 徹
1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。