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見えてこないアギーレ監督の思い描くサッカー 必要なのは戦術を伝える「通訳」
果たして今のサッカーで日本は世界の強豪に勝てるのか
日本代表が1勝も出来なかった2014年ブラジルワールドカップが終了してすでに3か月が経った。
開催国だったブラジル代表もある意味、日本以上に失意の大会だったかもしれない。ワールドカップ終了後ブラジル代表はドゥンガ監督、そして日本代表はアギーレ監督が指揮を執ることとなった。新監督のもとそれぞれ3試合ずつを戦い、ブラジルはこれまで3勝0敗、日本は1勝2敗だ。そしてお互いにとっての第4戦目はシンガポール・ナショナルスタジアムでの戦いとなった。
10月11日に中国でアルゼンチン代表に勝利したブラジルはこの日もエース、ネイマールやオスカルを温存することなく日本戦に臨んだ。一方、FIFAランキングで格下の日本は相手のオウンゴールで辛くも初勝利を挙げたジャマイカ戦のメンバーから6名を入れ替え、アジアカップ(来年1月・オーストラリア)に向けたメンバー選考の場としてブラジル戦を戦った。
結果は0-4でブラジルの得点は全てネイマールによるものだった。
試合終了後アギーレ監督は、「前半は非常に良い形が出来た。同点に追いつけるところもあった。後半相手に2点目を取られて崩れてしまった」とコメントしていた。
本当だろうか。次戦に向けた改善は正確な現状分析から始まる。この試合の前半が本当に良かったのか? アギーレジャパンの方向性は見えてきたのか?
データからその方向性を眺めてみたい。
この試合のボール保持率はブラジル60.6%対日本39.4%だ。前半に限って言えばブラジル67%対日本33%、パスの本数(成功率)はブラジル325(88%)本対日本180本(76.7%)とほぼブラジルがゲームを支配していた。
しかし日本が上回ったデータもいくつかある。シュート数はブラジル5本対日本6本、流れの中からのクロスボールはブラジル3本対日本9本、Duels(フィフティ・フィフティのボールの奪い合いのデータ)は日本の31勝23敗だった。
格上のブラジル相手にボールを持たれても仕方がない。しかし奪ったボールをなるべく効率よく攻撃に繋げたいという意図であれば、その目的はある程度達成できたかもしれない。
ブラジルがシュート1本を打つために要したパス(実際に通ったパス数/シュート)は57本。対する日本は23本だった。また、1本のクロスを上げるのに要したパスはブラジル95本に対して日本が15本と、これも圧倒的に日本代表の方が効率が良かった。Duelsの勝率が高く、クロス、シュートというチャンスメーキングを少ない手数で達成できたのだからアギーレ監督の感じたこと、それを言葉にしたコメントは正しかったと言える。
では、このサッカーを成熟させていけば日本代表は強くなり、ワールドカップベスト8という目標が達成できるのだろうか。どうしてもそうは思えないというのが正直な感想だ。
アギーレ監督は前半追いつくことが出来たと述べていた。サッカーである以上あらゆる可能性は否定できないが、どうしても今の延長線上に世界的な大会で欧州や南米の強豪チームに勝てるチーム作りという絵が見えてこない。それが見えてこない理由を次の「絵」が説明してくれるはずだ。
ブラジルのフォーメーションは4-2-3-1、日本は4-3-3だ。上の図はスターティングメンバーとフォーメーションの図で、下の図は前半を通して各選手が実際にボールタッチした場所の平均図だ。
ブラジル代表は4バックの両サイドが高いエリアでプレーしていること、センターフォワードのタルデッリよりネイマールの方がトップの位置でのプレーが多く、ポジションが入れ替わっていることを除けば、各選手がほぼ4-2-3-1というフォーメーション通りの位置でプレーされていたのが分かる。それに対して日本代表のフォーメーションはどうだろう。ほぼ原形をとどめていない。