新生・鹿島はなぜブラジル→欧州路線へ? 「もっとやるべきことがあったんじゃないか」…最多20冠の“常勝軍団”が抱いた危機感
【J番記者コラム】国内タイトルと無縁、“常勝”鹿島にとって受け入れがたい現実
勝っているチームはいじるな。
サッカーに限らず、勝負の世界の常套句だが、裏を返せば、勝てないチームは何かしらの手を打て、ということになる。
2018年にクラブの悲願であるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を初制覇し、歓喜に沸いた鹿島アントラーズも、その一方で、ここ5シーズン、国内タイトルからは遠ざかっている。これほどの“空白期間”はクラブ史上初めてであり、“常勝”という高い目標を自らに課す鹿島にとって受け入れがたい現実でもある。
危機感を募らせる理由がもうひとつある。
Jリーグ連覇中の川崎フロンターレに対し、終わってみれば、2年連続で勝ち点差20以上も引き離された。それはつまり、タイトルに手が届くどころか、タイトル争いさえも演じられなかったことを意味する。
このままではいけない――。常勝復権に向けて、さまざまな観点から検討が重ねられ、チーム改革に乗り出した。
これまでの鹿島といえば、クラブの基盤作りに尽力した御大ジーコがブラジル出身ということもあって、外国籍選手の獲得をはじめ、監督やコーチもジーココネクションを最大限に生かしてきた。それによって、クラブ創設30年間で、他の追随を許さない最多20冠を積み上げてきた成功体験がある。
だが、こうしたブラジル路線の恩恵にいつまでも浸ることなく、未来の鹿島を見据え、今、何をすべきか。具体的かつ明確な施策を次々に打ち出している。
掲げたテーマは「革新と挑戦」だ。クラブが育んできた「歴史と伝統」を重んじつつも固定観念にとらわれず、一からのチーム再建に挑む。
まず、指導陣が一新された。新指揮官に迎え入れられたのは、スイス国籍のレネ・ヴァイラー監督だ。現在48歳。母国のシャフハウゼンやアーラウといったクラブでキャリアを積み、アンデルレヒト(ベルギー)やアル・アハリ(エジプト)でリーグ優勝を経験するなど、野心に溢れる、叩き上げの人物であることが垣間見える。
コーチングスタッフにJリーグの大宮アルディージャや湘南ベルマーレでのプレー経験を持つセルビア国籍のドラガン・ムルジャコーチ、そしてフィジカル担当としてドイツ国籍のマヌエル・クレクラーコーチが就いた。ヨーロッパ出身の指導陣が就任するのはクラブ史上初めてであり、コーチ陣も含め、ずいぶん国際色豊かになった。