青森山田・松木玖生はプロで活躍できるか 古川陽介との違い、成功の鍵と最低条件とは?
【識者コラム】FC東京加入内定の松木玖生、ルーキーイヤーから活躍してもおかしくない
結論から言うと、ポテンシャル的には松木玖生(青森山田高/FC東京加入内定)がJリーグのルーキーイヤーから活躍してもおかしくない。
アンダー世代の代表から見てきているし、彼の落ち着いた振る舞いを目にし、言動を耳にしてきているので、本人のメンタルに関してはあまり心配していない。それでも現場で取材してきた1人として、少し長い目で見守ってほしい思いもある。
高校サッカー選手権など“高校3冠”を達成した青森山田高の主将で、チェイス・アンリ(尚志高)らと並ぶこの年代屈指のタレントである松木は高い技術を備えながら、黒田剛監督の指導で作り上げてきた屈強なフィジカルとメンタルは目を見張る。ただJリーグ、ましてJ1というのはそうした資質をハイレベルに持つ猛者の集まりだ。
高卒ルーキーとしてはそうした資質が松木も、ここからすべての面を引き揚げていく必要がある。1年目から活躍する最低条件になってくるのが目のスピード。現場の目で観ると当たり前だが、高校年代とプロでは次元が違うというレベルで、特にピッチサイドから観るとスタジアムの上のほうから俯瞰的に観るのとはまた違った差が見られる。
1つの事例に過ぎないが、先日の代表合宿でチェイス・アンリがトレーニングパートナーとして参加していた。彼も追加招集された松木とともに、飛び級でU-22日本代表に選ばれた、いわばスーパータレントだが、国内組のトップレベルが集まった代表練習ではミスはもちろん、判断やポジショニングの遅れが目立っていた。
そのアンリを合宿中ずっと可愛がる様子が目についた長友佑都は「長友さん、早すぎて脳が付いていかないですってボールが出るたびに言っていた」と語る。
A代表はJリーグのトップレベルが来ても、そのスピードに驚く場所ではあるが、選手権はもちろん青森山田高がクラブユースの強豪と凌ぎを削るプレミアリーグの基準から見てもJリーグ、とりわけJ1は次元が違う。FC東京のチームメイトである長友の存在は松木にとっても、大きな助けになりそうだ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。