青森山田・松木玖生は同じ舞台を3度も繰り返す必要があったのか 日本の異例な育成基準が生む“弊害”
どうしてもカップ戦“日本一”を決めたければクラブチームにも開放すればいい
そもそも同じ年代でクラブと高体連の大会を区分けし、双方の往来も規制する現行の仕組みが、いかに適切な選手の育成にそぐわないかを考え直す必要がある。どちらもトップレベルが目指すゴール(プロ)は同じなのに、別々のチャンピオンを決めなければいけない理由や、多感な時期に自分に適わない環境に身を置いてしまった選手たちの選択を制限するメリットなど見当たらない。どうしてもカップ戦で日本一を決める流れを継続したければ、学校対抗にこだわらずクラブチームにも開放すればいいし、例えばU-21選手権を新設して、青森山田のような強豪チームは、大学やJクラブも参加して来る同年代の大会に挑戦させるのも一考の余地があるはずだ。
すで部活のクラブ化はほかの競技関係者たちから提案が出ており、むしろもっともクラブ化が相応しいはずのサッカー界は出遅れている。JFAは2050年までに世界一という目標を掲げているが、そのためにはもっとも肝になるのは育成だ。ところが日本ほど適性チームで活動できていない素材があふれる国は珍しい。育成で古典に埋没し改革が進まないようでは、この先大きな躍進を望むのは難しい。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。