独走態勢のマンCに戦術的な欠点なし 攻守を支える「ポケットへの侵入」と「ハーフバック制」
メンバー交代でもチームのパフォーマンスに影響なし
ペナルティーエリア内に多くの選手を送り込むためのリスク管理もぬかりない。敵陣に攻め込んだときのシティは2人のCBの前に3人を配置して、セカンドボールやカウンターアタックに備えている。中盤に位置する3人の中央はアンカーのロドリだが、左右はオリジナルポジションがSBのジョアン・カンセロとカイル・ウォーカーだ。この3人がカウンターアタックへの防波堤になり、彼らが止めている数秒間でゴール前へ突入した4人があっという間に戻ってくる。SBがボランチ化している「偽SB」だが、むしろプレー時間的に言えば2バック・システム時代のハーフバックの呼称がふさわしいだろう。サイドにはあまりいないし、バックでもないからだ。
選手が代わってもチームとしての機能性はほとんど変わらない。カンセロがオレクサンドル・ジンチェンコになり、ケビン・デ・ブライネがイルカイ・ギュンドアンになっても基本的には同じである。また、流れの中で頻繁に居場所が変わるが、全体の配置は同じ。メンバー交代があまりチームのパフォーマンスに影響しない。
シティがこれから一時的に調子を落とすことがあるとしても、これだけすべてが揃っていると、ライバルが13ポイントをひっくり返すのはまず無理だろう。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。