マジョルカ久保建英の自由制限、負担増大? チーム不振、苦肉のシフトチェンジで忍び寄る危機

久保ら与えられていたプレーの自由が許されるのか疑問が残る

 ここまで見てきてチームが必要としている戦力と新天地を求めた選手たちにギャップがあることが分かる。優先的な補強ポイント(大型FW、センターDF)と離脱選手(サイドアタッカー、センターMF、右DF)でポジションが違うのだ。チームが求めているのがいずれも長身大型なのに対し、去った選手たちは小型でスピード、テクニック、スタミナを売りにしている点でも好対照。基本方針としてクラブは抜けた選手の数だけ戦力補強するとしているが、仮に時間切れで中盤補強ができなかった場合、今後、久保らチームに残る中盤選手の負担が増大する恐れがある。

 また頭数が揃ったとしても、現在のチーム状況からこれまでと違う戦い方を余儀なくされる危険性もある。

 これまでのマジョルカの戦い方は可能な限りボールを支配して攻撃を仕掛けるスタイルで、開幕当初はイメージ通り(またはそれ以上)の戦いを展開した。しかしその後ペースダウン。攻守で相手を下回るケースが多くなっている。リーガ前節には最下位レバンテに今季初白星を献上、直近のリーガ12試合で1勝6分5敗と明らかに調子を落としている。要因として戦力的な乏しさがあるのではないか。つまり新戦力の上積みが乏しく、現有戦力の中でも事実上の戦力外となっている選手が数人いるということ。膠着状態で打開策がなく、またレギュラークラスたちも相手に研究され、疲労や負傷でコンディションを落とすといった悪循環に陥っているということだ。

 事実、最近のチーム不振からすでに一部でルイス・ガルシア監督の解任を求める声が出始めている。このままチームが低迷するようであれば苦肉の策で守備固めの戦い方へシフトチェンジすることも考えられる。そうなれば久保ら攻撃メインで守備の貢献度が比較的低い選手たちに与えられていたプレーの自由が許されるのか疑問が残る。むしろそれが制限されると考えるほうが自然な流れだろう。

 すでにマジョルカ以下の5チームはいずれも監督交代。ヘタフェはキケ・サンチェス・フローレス監督に替わって守備偏重などと揶揄されながらも勝ち星を重ねて降格圏を脱出している。マジョルカに必要なのは単に新戦力が加わることではなく、怪我で離脱している現有戦力の取り戻しを含めた総合的な戦力充実と、それによって期待できる悪循環からの脱却で、それが叶わなければより厳しい現実に直面することになる。

(島田 徹 / Toru Shimada)

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島田 徹

1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。

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