Jスカウト熱視線の大津3年生DF、骨折で出場絶望から復活…チーム一丸で叶えた“40分の選手権”【高校サッカー秘話】
DF日高華杜、大会直前の試合で鎖骨を骨折も選手権決勝のピッチに立つ
大津(熊本)対青森山田(青森)の選手権決勝のスタメン表を見て驚いた。大津の先発メンバーに、これまでベンチ外だったDF日高華杜(3年)の名前があったからだ。
日高は今大会でも注目の選手の1人だった。爆発的なスピードと運動量を誇り、クロスの精度はもちろん、カットインからのシュートも強烈で、ゴール前のこぼれ球にも反応してフィニッシュに絡むなど攻撃的な右サイドバックだ。
しかし、大会直前の試合で鎖骨を骨折。今大会の出場はほぼ絶望的だと思われていた。だが、「日高を決勝まで連れていって、ピッチに立たせる」という合言葉を胸に、日高が戻って来られる可能性が高くなる、最後の決勝に向けてチームは1つにまとまった。
そして、それを選手たちは実現させた。確かに日高は選手権のピッチに立った。しかも、新国立の決勝の舞台にスタメンとして。
「一番負担が少ないところで使った」と山城朋大監督が明かしたように、右サイドバックではなく、右サイドハーフとしてプレー。ただ、コンディションが万全ではないことは明らかだった。持ち前の爆発的なスピード溢れる突破は見られず、前半40分に交代。チームも0-4の敗戦を喫し、準優勝に終わった。
「(日高の出場は)周りも望んでいたし、彼自身も望んでいた」と山城監督が語れば、10番でキャプテンのMF森田大智(3年)も、「日高はまだ怪我が治っていない状態で怖さもあったと思うけど、本当によくプレーしてくれたと思います」と友を労った。
日高はこの先、関東の強豪大学に進学する。正直、高卒プロでも十分通用する実力を持つ選手であることは間違いない。実際に右サイドで躍動する彼に熱視線を送っていたJスカウトもいた。
決勝での40分間は本人にとって到底納得できる出来ではなかっただろう。だが、仲間が自分のためにつないでくれた時間の意味と価値は誰よりも理解しているし、自身のサッカー人生の中でもかけがえのない40分間であることも理解している。インターハイの時、日高はこう口にしていた。
「大津に来たからこそ、自分は大きく成長できたと思っています。レベルの高い仲間に囲まれて、周りが支えてくれるからこそ、僕も思い切って攻撃参加ができるし、前への推進力という武器を出すことができる。感謝の気持ちを持ってプレーをしたい」
きっと今、さらなる感謝の気持ちと決意が生まれていることだろう。日高には大学サッカーで躍動し、4年後にプロになってさらに活躍をして、仲間に対して恩返しをするという重要な責務が生まれた。その自覚を持って新たな4年間を過ごさんと、モチベーションは高まっているであろう。今後の日高にも注目だ。
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(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)