ポゼッションにもカウンターにも変幻自在! ウェールズのEURO躍進を導いた“ハイブリッド型”戦術
劣勢の後半に貫いた“弱者の戦術”
こうしたベルギーの猛攻に対して、ウェールズの対応は単純だった。クリアで逃げることのみだ。これだけの攻撃を仕掛けられながら、タックル数、インターセプト数、ボール奪取数はほとんど増えていない。唯一クリア数が前半の7本から後半21本と3倍以上増えている。
FIFAランキング2位、今大会決勝トーナメント進出チーム中、最も破壊力のあるベルギーに対して、ウェールズは前半しっかりとボールを支配して互角以上の戦いを行い、後半一転し攻勢を強める相手に対して“弱者の戦術”を徹底した。
その戦術を、攻撃の効率性という観点からまとめたのが次のデータだ。シュート1本を打つために何本のパスを回したのか? この数字を見るだけでは、前半と後半に、ウェールズ、ベルギーとも大きな差はない。
しかし、相手陣内でのパス回しからペナルティーエリアに侵入した回数を見ると、前半はウェールズ21本、ベルギー27本と大きな差はないが、後半は15本対65本と4倍以上の差が開いている。アタッキングサードに侵入したプレーから枠内シュートに持ち込んだプレーを見ると、ウェールズは前半9回の侵入に対して1本の枠内シュートだったのに対しベルギーは4回に1回と倍以上の頻度でチャンスメイキングできていた。それが後半になるとウェールズが5回に1回だったの対し、ベルギーは34回に1回という変わりようだった。
ベルギーがボールを支配し、数多く作るチャンスをことごとくクリアで跳ね返し、少ないチャンスでシンプルに相手ゴール前にボールを運びシュートに繋げるという、一見簡単そうなプレーを精度高く保ったウェールズ。その精度の高さは、前半ベルギー相手に行ったポゼッションサッカーもできる技術力がベースにある。
ウェールズのこの日の勝利は単なる相性の良さではなく、ポゼッションとカウンターアタック、状況に応じた“ハイブリッド型”戦術の可能性を感じさせた。
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データ提供元:opta
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フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web