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“お手本”長谷部誠がいることの恩恵 フランクフルトが「守りづらいチーム」へ進化した理由
【ドイツ発コラム】課題だった中央からの攻撃が改善
元日本代表MF長谷部誠と日本代表MF鎌田大地が所属するドイツ1部フランクフルトの調子が上ってきている。シーズン序盤は新監督オリバー・グラスナーの志向するサッカーとこれまでしてきたサッカーとのギャップがうまく埋まらず、どこかもどかしい試合が続いていたが、昨年終盤はあれよあれよと連勝で勝ち点をだいぶ積み重ねることができた。
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そんなフランクフルトでチーム最年長、いやいやブンデスリーガ最年長の長谷部が、今年も変わらず重要な役割を担っている。この男には限界説なんて通用しない。
ここ最近のフランクフルトの攻撃を見ていると長谷部からの縦パスを起点に攻撃が加速度を増してゴール方向へつながっていく頻度が相当増えてきている。
この数年間常々に口にしていたことだ。
「真ん中からの攻撃が……」
システムを変え、布陣を変え、やり方を変えてもここだけはなかなか改善されないでいたものが、ここにきて非常にうまく機能するようになっている。取り組みの継続性が実を結び出している。
本来中央からの攻撃は相手も警戒レベル最大で守ってくるので、ボールロストの危険性も高くなる。不用意なチャレンジは相手カウンターへのプレゼントとなってしまう。でもそこをうまくかいくぐることができれば、その眼前にはビッグチャンスへの橋がかかっているのだ。
ミスは許されないけど、状況を作り出してパスを送ることができたら、というリスクマネジメントを丁寧にしながら、長谷部がゲームをコントロールしていく。「どうしたらいいの?」とピッチ上で迷子になることなく、意図をもって横や斜めにドリブルをしながら、常に中継点を視野に入れている。相手がカバーしてないパスコースを残しながら、ドリブルで運ぶ。そして相手がずれた瞬間を見逃さずに鋭く正確なパスを届けてしまう。
近くの味方にボールを預けるのではなく、相手の守備の何枚も越えた先にいる仲間へとパスを送る。つなぐためのパスではないから、ミスになることもある。味方との意思の疎通がずれて、ボールがそのままサイドラインを割ってしまうことだってある。でも、そうした仕掛けがあるからこそ、フランクフルトの攻撃はどんどんバリエーションが増えてきているし、相手にとっては守りづらいチームになってきているのだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。