京都が12年ぶりのJ1昇格を果たせたワケ プロホペイロが見た曺監督の“熱くて優しい”人柄

曺貴裁監督を中心に、京都は一致団結の戦いで駆け抜けた【写真:Getty Images】
曺貴裁監督を中心に、京都は一致団結の戦いで駆け抜けた【写真:Getty Images】

「未来は変えられる」 負けても次を見据え続けた選手たちのポジティブ思考

 監督にはそれぞれの哲学やスタイルがある。松浦氏が見た曺監督の特長は、チームの細部まで見逃さない繊細なチームマネジメントだという。「いつもどおりにやろう」――。曺監督がシーズン中、口を酸っぱくして選手やスタッフに伝え続けた言葉は、松浦氏の脳裏にも焼き付いている。

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「Jリーグ元年(1993年)からホペイロとしてやらせていただいていますが、曺さんは選手を試合に向かわせる手腕が凄いなと感じました。チーム立ち上げ当初から、選手だけでなく、スタッフにも目が届くというか、細かい部分まで把握して、マネジメントされていた印象があります。日々のトレーニングから1人1人の動きを気にされたり、小さなことも見逃さないのはさすがだな、と。チームの雰囲気も良く、開幕前の沖縄キャンプで『今年もしかしたら(J1昇格)行けるんじゃないか』と思ったのを覚えています。

 曺さんが常に選手に言っていたのは、『ピッチで戦うのは選手で、俺じゃない。今週サンガタウンでやってきたことを試合に出そう。出して勝てば君たちの成果だ。負けたら俺が全部責任をとるから、常に思い切りやれ』と。『いつもどおり』と言葉にしたら簡単ですけど、それが一番難しい。でも、それをしっかりとみんなが体現できたのは、曺さんのおかげだと思います」

 2021年シーズンの京都は、開幕5試合を見れば、2勝1分2敗と決して好スタートではなかった。しかし、そこから6連勝を含む15戦無敗(11勝4分)で一時首位に立ち、最後までJ1自動昇格圏内の2位をキープし続けた。長いシーズンの中で、連敗が一度もなかったことを、松浦氏は昇格を果たせた要因の1つに挙げる。

「曺さんは『優勝や昇格を意識するのは残り5試合の段階でいい』とシーズン開幕当初に話していました。昇格を本当に意識したのは、ホームの大宮アルディージャ戦(第37節/1-0)。あの(後半アディショナルタイムのMF川﨑颯太選手の)劇的なゴールは、本当に最後のワンプレーでしたから、大きなポイントだったと思います。

 2021年、チームは連敗がありませんでした。負けた試合のあとも、選手たちは『本当に試合に負けたチームなのかな』という雰囲気で、『結果は変わらないけど、未来は変えられるぞ』と。逆に、曺さんが少し引きずってるんじゃないかなということもあったくらいです(笑)。チーム全体が次の試合に向いていたのは、強みだと感じました」

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