前橋育英8強の立役者 2年生FW高足善が殊勲2発で“たくましい虎”に変身「兄さんのためにも優勝したい」
1月2日の3回戦で鹿島学園と対戦、途中出場の2年生FW高足が2ゴール
第100回高校サッカー選手権は、1月2日に首都圏4会場で3回戦の8試合が行われ、4日の準々決勝(フクダ電子アリーナ、等々力陸上競技場)に進むベスト8が決まった。
全国高校サッカー選手権で、初めて会場として使用された埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場での第1試合は、前橋育英(群馬)と鹿島学園(茨城)との北関東対決となり、高円宮杯U-18プレミアリーグ東地区に今季昇格した前橋育英が2-1で競り勝った。昨夏の高校総体ベスト8の大津(熊本)と準々決勝で対戦する。
試合の主導権は1、2回戦で10点を挙げた前橋育英が序盤から握っていた。
しかし鹿島学園のGK小副川虎之介(3年)が連発した好守に遭ったほか、名将・山田耕介監督を驚かせた敵の陣形にも手を焼いた。「相手がブロックを作り、引いて(守って)きたのは予想外。本当にびっくりした。ポゼッションでやり合うのかと思っていましたから」と振り返ったように、持ち味のサイドアタックを仕掛けても、V・ファーレン長崎へ加入するMF笠柳翼(3年)が、巧みなパスとドリブルで好展開してみても、決定機を迎えた場面はそう多くはなかった。
アクシデントにも見舞われた。1回戦でハットトリックしたエースFW守屋練太郎(3年)が、前半38分に相手選手と接触して無念の離脱。代わって投入されたのが、2回戦でも後半20分から起用され、15分後にチームの6点目を蹴り込んだ2年生FW高足善だった。
前半アディショナルタイムに送り込まれた158センチの小兵は、185センチと182センチの大型センターバック(CB)が構える鹿島学園のゴール前で果敢に奮闘。「入ったばかりは何をしたらいいのか分からなかったけど、だんだんと(自分のプレーが)できるようになった」と自己分析する。
“だんだんとできるようになっていた”後半17分、右サイドバック大竹駿(3年)の出色の右クロスに小さな体を投げ出し、ヘディングで待望の先制点を突き刺した。「いいクロスだったので触るだけでした」と謙遜するが、2回戦で2得点のMF小池直矢(2年)の動きに相手の長身CBが釣られ、その間隙を縫ってスペースに飛び込む一瞬の勘働きがもたらした得点である。
この5分後にアンラッキーな失点で追い付かれ、1-1のままPK戦に突入すると思われた後半39分に決勝点が生まれる。また高足が大仕事をやってのけた。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。