埼玉・西武台、無念の初戦敗退 肺気胸で倒れた3年生FWへ「申し訳ない」…大会1か月前から漂っていた悪い予感とは?
今夏のインターハイ16強の三重を相手に0-1惜敗
100回の節目を迎えた全国高校サッカー選手権大会は12月29日、前日の開幕戦に続いて首都圏8会場で1回戦の残り15試合が行われた。前回大会は新型コロナウイルスの感染拡大防止策として原則無観客だったが、今回は入場者数を制限して有観客で開催された。
NACK5スタジアム大宮での第1試合は、11年ぶり出場の地元埼玉の西武台高が、今夏のインターハイ16強の三重高(三重)に0-1で敗れた。西武台の初戦敗退は出場4度目にして初。埼玉県勢が初戦で姿を消すのは、第97回の浦和南以来3大会ぶりとなる。
西武台は2週間前に肺気胸で体調を崩したFW細田優陽(3年)を除き、ほぼベストの陣容で臨んだ。しかし4月の関東高校大会予選を無失点で制し、今大会の埼玉予選も5試合で1失点という堅陣が立ち上がりにいきなり崩された。
三重が逆襲・速攻に転じた前半9分に失点。MF北岡勇輝(3年)に左を突破され、ゴール前への鋭いクロスをDF大地山開(3年)にヘディングで決められた。
しかし序盤の失点とあり、西武台は焦らず慌てず、外から中から速く鋭く攻め込んだ。主将の右SB原田蓮斗(3年)、左SB安木颯汰(3年)が持ち前のサイドアタックで好機をつくれば、FW松原海斗(3年)が軽やかなドリブルで敵陣深くに進入しては、相手守備陣を揺さぶった。
同14分にMF丸山実紀(3年)のヘディングシュート、同31分にはエースFW市川遥人(3年)が右から持ち込んで強烈なシュートを放ったが、いずれも枠を捕らえられない。この後もDF武笠隼季(3年)の惜しいボレーをはじめ、次から次へと相手ゴールを襲い、前半だけで9本のシュートをお見舞いしたが、得点できずに1点リードされたまま折り返した。
後半に入っても西武台の攻勢が続く展開となり、許したシュートはわずか1本。圧倒的にボールを支配し、同11分にはMF和田力也(2年)の決定的なシュートがGKに阻止されるなど、4度のビッグチャンスを迎えながらとうとう1点が取れず、公式戦としては6月19日の高校総体予選準々決勝で浦和東に敗れて以来の黒星を喫した。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。