正守護神がアップで負傷の緊急事態 東福岡、土壇場の”完全スクランブル起用”の舞台裏
GK須田純弥が登録メンバーから外れ、GK戸成晃大が急遽起用されて無失点
第100回全国高校サッカー選手権は12月29日に首都圏8会場で1回戦が行われ、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場の第2試合では東福岡(福岡)が秋田商(秋田)を1-0で下した。しかし、その勝利は緊急事態を乗り越えてのものだった。
試合は立ち上がりから一進一退の展開になり、東福岡は前半30分に左サイドから切り崩すと、ゴール前でワンタッチパスを経由してボールを受けたMF楢﨑海碧が蹴り込み、1-0とリードを奪った。後半は守る時間が長くなったが、このまま逃げ切った。3回の優勝経験を持つ強豪としては、いかに秋田商が全国最多46回目の出場を誇る伝統校であるにしても、苦戦のイメージが強くあった。
しかし、そこにはいくつかの要素があったという。中心選手であり主将のDF段上直樹、正GK須田純弥がこの試合の登録メンバーに入らなかった。これについて森重潤也監督は「コンディションの問題」と話したが、特にGKは緊急事態だったことを、フル出場して無失点に抑えたGK戸成晃大が明かした。
「アップの時に(須田)純弥が怪我。急遽(スタメンを)伝えられてすごく緊張した。チームメイトが『戸成ならできる』と声をかけてくれて落ち着けた。まず無失点に抑えられたのは良かった。課題も見つかったことで良い試合になった」
戸成自身も右膝の疲労骨折から復帰して1か月ほど。福岡県予選ではその負傷により登録外になったところからの復活劇だっただけに、完全なスクランブル出場だった。
そうしたなかでも、最終的に勝利を持っていくのは強豪校ならではだ。2回戦では大津(熊本)との九州勢対決になるが、決勝ゴールの楢崎は、「自分たちの代は一度も大津に勝ったことがない」と、ここまでの直接対決では劣勢だと認めている。それでも、「相手は攻撃的なので守備から入って、持っているものをすべて出してゼロに抑えれば勝てると思う」と力を込めた。
森重監督は「全体的なスピード感はまだまだ上げないといけない。対戦相手も考えなくてはいけないが、自分たちのできなかったこと、仕掛けや守備のアプローチ、判断やプレーのスピードは、選手権という雰囲気の中で緊張感があったのか、選手たちと話しながら修正していきたい」と、チームの出来には首を傾げた。ここから尻上がりに調子を上げて、4回目の全国制覇まで歩みを進められるのか、12月31日の2回戦は正念場になりそうだ。