中学1年で競技スタート→Jスカウトが獲得熱望 「一番下」から異色のキャリアを辿った“高校ナンバーワン”DFの凄み
選手権のライバルに言及「仲が良いからこそ、真っ向勝負をしたい」
「最初はどれだけ出来るかを知りたいと思って、セカンドチームのレギュラーとしてプリンス東北(トップチームがプレミアリーグに所属していたため)で起用し続けました。当時はまだプリンスでも通用するレベルではなかったのですが、将来性を信じて使い続けたら、ミスはたくさんするけどその分、どんどん成長をしていくんです。課題だったキックの部分も磨かれて、1年を通じてCBとして基礎が出来上がっていきました」
高1で選手権に途中出場すると、2年からはレギュラーに定着。そこからの伸び率はさらに右肩上がりを見せた。キックは単純なロングキックから膝下のシャープなスウィングを意識して、対角だけではなく、同サイドにも正確にコントロールキックができるようになった。カバーリングの質も向上し、CBに必要な要素が次々と揃っていった。
迎えた選手権予選決勝。学法石川を相手に堅守を見せる一方で、なかなか相手ゴールをこじ開けられなかった。そんななか、1-1で迎えた後半アディショナルタイムに自陣CKの流れから50メートルを爆走して、右からのラストパスを左足で蹴り込んで劇的な決勝弾を挙げた。
「FWだったこともあって攻撃も好きなのですが、あの時は身体が勝手に動いていた。選手権でもゴールを挙げられるCBだと言うことを見せつけたい」
12月28日、いよいよ100回大会が始まる。選手権予選後に話を聞いた時、ライバルの存在についてこう口にしていた。
「ライバルはやっぱり松木玖生選手です。青森山田とはトップチームと戦ったことがなくて、プリンスリーグ東北ではセカンドチームが相手。U-22日本代表ではいつも一緒にいたほど仲が良いからこそ、真っ向勝負をしたい選手です」
松木を擁する青森山田と戦うには決勝までコマを進めないといけない。そこに至るまでの道のりは険しいが、今の尚志にはそれを達成できるだけの力がある。伸び代とポテンシャル、何より上手くなりたいという純粋な向上心を持つチェイス・アンリは言う。
「高校最後の大会なので、ずっとみんなで目指して来た全国制覇をしないといけないと思っています。僕は本気です」
注目CBは輝きを放てるのか。ピッチ上で抜群の存在感を放つ将来性抜群のチェイス・アンリに未来を感じ取ってもらいたい。
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、柴崎岳、南野拓実など、今の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』(徳間書店)など10作を数える。