ドイツで注目度上昇 ビーレフェルト奥川の2戦連続ゴールに見た“攻撃の切り札”としての光
ボーフム戦ではブンデスで初のヘディング弾で決勝点
ドイツ1部ビーレフェルトのMF奥川雅也が、連続ゴールで注目を集めている。現地時間12月15日のブンデスリーガ第16節ボーフム戦(2-0)ではヘディングシュートで決勝点を挙げ、国営放送「ARD」のスポーツ番組「スポーツシャウ」が選定する同節ベストイレブンに選ばれた。
「前節(15節ヘルタ戦/0-2)すごいひどい試合だったので、みんなでもミーティングをして、『ホーム2試合、もう1回チームとして戦おう』って試合前から話していて。準備期間は短かったけど、気持ちの面で今日は『みんなでやるぞ!』というのが出せた試合かなと」
奥川は試合後、このように振り返っていたが、たしかにビーレフェルトの全選手から気合いの入ったプレーが随所にみられていた。そして、ボールを保持すると「ビデオ分析で見て思ったよりスペースがあったので、僕たちの狙いだった空いたスペースに人が入ってというのができていた」と奥川が指摘したように、テンポのいい攻撃で相手ゴール前へとボールを運んでいく。
前半から虎視眈々とゴール前へ入り込むチャンスをうかがっていた奥川が後半6分、ついに均衡を破る貴重なゴールを決めた。それもヘディングで、だ。ブンデスリーガでは初めてのヘディングでのゴールに味方もスタッフも驚いた。
「たぶんザルツブルクで1回、開幕戦で決めているんですけど、練習でもあまりヘディングで決めることはないんで、チーム全員、自分も、スタッフも含めて『何が起きた?』ってびっくりするくらい(苦笑)。ただ自分ではいいボールが来ればヘディングできるという自負はあるんで、それが試合で出せたというのは良かったですね(笑)」
フランク・クラマー監督は試合後の記者会見で、奥川のゴールシーンについて地元記者に尋ねられると、笑顔を浮かべながら冗談交じりに答えていた。
「マサヤがヘディングに強いことは知っていたよ(笑)。彼はいつでもゴールへ向かったプレーで何かを起こしてくれそうな選手だ。タイミングよく走り込んで、いいポジショニングを取ってくれる」
得点につながったシーンだけではない。後半9分の走りも素晴らしかった。中央へ味方がボールを運ぶと左サイドからセンターへ入り込む。そこにはパスコースはない。でもそうすることで左サイドに流れていた味方へのパスコースを作っていた。そして自分はゴール前でスルスルとフリーとなり、パスを受けたらシュートに持ち込める段取りができ上がっていた。味方のパスミスでそのシーンはお預けとなったが、インテリジェンスの高さを感じさせるプレーだった。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。