マンC戦で衝撃7失点 リーズが突きつけられた“マンツーマン戦術”の限界 理屈は簡単、実行は難しい
マンツーマンの短所とは? 玉突き的にすべてがずれていく脆さ
マンツーマンの短所は、1人抜かれてしまうと玉突き的にすべてがずれていく脆さだ。ただ、リーズは自陣に1人余らせているので、どこかで1人外されてもカバーリングとマークの受け渡しが早い。このへんはマルセロ・ビエルサ監督なので、抜け目なくトレーニングで仕込んでいるようだ。
守備強度が高く、ポジション流動性に惑わされないマンツーマンは、けっこう対戦相手にとって厄介なのだ。ところが、シティは苦もなく7点を奪った。マンツーマンは「3人目の動き」に弱い。そこを突いて崩していった。
マンツーマンといっても、リーズは自陣で1人余らせているので、シティのセンターバック(CB)の1人はフリーになる。CBが持ち上がってリーズのMFにマークを捨てて向かってくるように仕向けたところで、マークされている味方をクッションに使ってフリーになった選手にボールを届ける。3人の連係であっさりと崩していった。
理屈は簡単だが、実行するのはそう簡単ではない。シティだからできたことだと思う。マンツーマンにはそれなりの効果がある一方、ある水準以上の相手には好き放題に破られてしまう。リーズにとっては厳しい現実を突きつけられた試合だった。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。