異色だった浦和・槙野智章の行動力 古参サポーターから反発招くも――「レッズのために」立ち上がった男の10年

「自分が言ったこと、やったこと、行動を起こしたことは僕の財産」

 そうした感情表現の豊かさや、直情的なところは軋轢を生んだこともある。相手選手のドリブル突破をスライディングで止めた時に、「見たか」とばかりにガッツポーズを見せたことは議論を呼んだ。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の済州ユナイテッド(韓国)戦では、試合中からいくつかの遠因があったとはいえ、勝利後にスタジアムからの声援に応えたガッツポーズが相手ベンチへの挑発と勘違いされ、相手チームから集団で追いかけまわされるという前代未聞の事態も起こった。これは槙野に非があるわけではないが、なぜかこのように目立ってしまうのも彼のキャラクターが為せる宿命なのかもしれない。

 他にも、スタジアムのゲート内にはサッカー以外の要素を持ちこまないポリシーを持つ浦和だけに、稼働率が低いことで有名なマスコットをフォーカスしようとしたこともあり、オフには積極的なテレビ出演、YouTubeチャンネルの立ち上げなど、ピッチ外でも多くの行動を起こした。常に日本でサッカーがもっと注目される存在になって欲しいという思いが根底にあったが、必ずしも賛同ばかりだったわけでもない。それでも、槙野はそうした浦和での10年についても振り返っている。

「みんなが嫌がることを率先してやりました。全てはクラブを強くしたい、1人でも多くの方にスタジアムに来てもらいたい、レッズを好きになってもらいたい、という思いで色々とやってきました。少し勘違いされるような受け取り方をされることもありましたが、側にいてくれたのはレッズの選手やスタッフ、ファン・サポーターでした。自分が言ったこと、やったこと、行動を起こしたことは僕の財産です」

 好きの反対は無関心という言葉もあるが、賛否両論を巻き起こしながらも話題になっていく行動力は、過去の浦和に在籍した選手にはなかなか無い異色のものだった。来季以降も現役続行することを基本線にしている槙野だが、新たなクラブで何を仕掛けるのかも楽しみなことの1つだと言えるだろう。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

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