“優等生監督”リー・シャオポン電撃誕生 中国代表チーム、指揮官交代の裏事情とは?

リー・ティエ監督は豪州戦ドローと「32分間の会見」が発端で更迭

「リー・ティエ32分間の会見、選ばれたのは優等生監督」

 先日電撃解任となった前中国監督のリー・ティエですが、以前から解任の噂はあったものの、11月のW杯アジア最終予選オーストラリア戦後に一気に状況が変わり、そのまま更迭となりました。

 大きな原因として、リー・ティエのオーストラリア戦後の32分間の記者会見があります。オーストラリア戦が1-1という結果に終わり、本大会出場が非常に厳しい状態になったことに対し、「この隔離生活がどれだけ残酷かあなたたち記者には分からないだろう(中国代表はコロナウイルスの影響により、ホームゲームは第三国で開催)」「ホームでやろうと、第三国でやろうと結果は変わらないと言うファンがいるが、ヤツらは頭がおかしい。もし中国で試合ができていれば我々は勝ち点6を取っている」「誰も私より中国サッカーを理解している人間はいない。私は誰より中国サッカーを理解しており、誰よりも中国代表を理解している」といった内容を、怒りながら32分間話続けました。

 この会見の異例の長さ、そしてリー・ティエの態度や内容は瞬く間に中国メディアで批判され、後日リー・ティエは自身のSNSにて「しゃべり過ぎた」と謝罪。しかしあろうことか、その謝罪投稿には彼自身のスポンサーの商品写真があり、広告疑惑が持ち上がりさらに大炎上。結果、一気に解任となりました。

 このことから中国サッカー協会は、とにかく問題を起こさない、記者やサポーターと揉めない人物を今回は探したと言われており、そこで選ばれたのがリー・シャオポンです。

 彼はメディアや周囲の人間との関係構築力に優れていると言われ、中国メディア「東方体育日報」も彼の結婚式のエピソードを例に、「彼は周囲の人間と関係を構築する力に優れている。例えば彼が結婚式を挙げた当時、中国代表は2つの派閥に分かれていた。しかしリー・シャオポンの結婚式には当時の中国代表選手が皆喜んで参加した」と紹介しています。指導した選手からの人望も厚く、マンチェスター・ユナイテッドで香川真司(現PAOK)とプレーし、2019年に彼の元でプレーしたベルギー代表MFマルアン・フェライニも「彼はとても友好的で、そして時に厳しい素晴らしい監督だ」と山東泰山チーム広報誌にて称賛しております。

 リー・ティエという個性の強いカリスマ性のある監督に替え、管理しやすい優等生監督を選んだと言われる中国サッカー協会。しかし、リー・シャオポンも18年、19年に山東泰山を率いた際、2年連続で中国スーパーリーグ最優秀監督を受賞するなど、優等生であるだけでなく、優秀な監督でもあることは間違いありません。

 給与未払いのチームが10以上あることが発覚した中国リーグ、中国一のメガクラブ広州FCも親会社広州恒大の経営危機の影響を受けるのは必須であり、またリー・ティエ監督の電撃更迭と、いい話が最近ない中国サッカーですが、この新監督就任という出来事を機に、少しでも良い方向に進んでいけることを願っております。

[著者プロフィール]
久保田嶺(くぼた・れい)/1991年生まれ、埼玉県出身。中国最大のサッカーメディア「懂球帝」にて、日本人初の公認アカウントとして活動をしている。

(久保田嶺 / Rei Kubota)

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久保田嶺

1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。

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