「今も人生での指針の1つ」 Jリーグ創成期を支えたブラジル人元Jリーガーが日本で学んだ”不屈のスピリット”

友人の元ブラジル代表DFホッシャ(左)とマネジメント会社を設立【写真:藤原清美】
友人の元ブラジル代表DFホッシャ(左)とマネジメント会社を設立【写真:藤原清美】

代理人業、スポーツイベントの企画運営、スカウト、サッカーディレクターにも挑戦

 同時に、トーレスはスポーツマネージメント会社を設立した。長年の友人である元ブラジル代表DFヒカルド・ホッシャとの共同経営だ。

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 そこでは代理人業だけでなく、いくつかの中堅クラブや、育成年代専門のクラブの顧問を務めたり、スポーツイベントの企画運営も手がけた。

 ブラジルでブームを起こしたのは、ミニサッカーリーグだ。往年の名選手たちが、現役時代の所属クラブのユニフォームを着て、リーグ戦に臨むというもの。選手たちにとっては再び表舞台に立つ機会となり、サポーターにとってはかつてのスターたちのプレーに、再び熱狂できる。何より、テレビ中継やスポンサー、自治体との連携などにより、ビジネスとしても成り立つ仕組みを作り上げた。

 また、2014年のブラジル・ワールドカップ(W杯)を前にした数年間は、リオデジャネイロでさまざまな国際イベントが開催された。サッカーに関するフォーラムなどのほかに、各国代表OBによるミニサッカーなども数々開催され、トーレスはその多くで企画運営全般の指揮を執った。

「僕らはよく外国の人たちと話すんだけど、人によっては、ブラジルではやれないだろうと考えていた。だから、世界中の人に、ここでスポーツイベントがどう機能するかを見てもらえたし、良いイニシアチブが取れたと思う。外国人がリオに来たくなるようなイベントを、1つ1つ実現していくことができた」

 トーレスはプレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドの南米でのスカウトを務めていた時期もある。当時は下部年代代表の大会をはじめ、南米各地を飛び回っていた。

 2017年には、フルミネンセのサッカーディレクターも務めた。就任にあたり、余計な誤解を生まないように、選手の代理人業からは、すっぱりと手を引いていることを宣言したのは、彼の真面目な姿勢の表れだった。

 プロとしての探究心は、尽きることがない。近年、ブラジルサッカー連盟が監督ライセンス制度を、世界的にも通用するシステムに整備したことから、その講座にも参加した。オンライン授業、課題の提出、合宿によるピッチの内外での集中講義、実地研修など、長期にわたるハードな講座だ。

「監督になることは、近い将来に目指すプランじゃないけど、人生では何が起こるか分からない。もし、機会が訪れたら、やりたいと思うはずから、いつでも学び、準備をしておかないとね。それに、クラブでのマネジメントを続けるにも、監督に必要なことを、僕自身がより一層理解していれば、もっと貢献できる」

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藤原清美

ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。

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