清水エスパルスはどこへ向かって行くのか 膨らんだ期待と味わった苦しみ――最終節で見せた“躍動感”に期待
C大阪から感慨深いゴール、シーズン最初と最後の試合はエキサイティングな逆転勝利
失点しても躍動感は失わずに球際でも闘い攻め続け、前半アディショナルタイム2分に西澤のフリーキック(FK)をDF鈴木義宜が膝で合わせて押し込み前半のうちに同点に追い付いた。そして、ハーフタイムを挟んでもその勢いは続き、後半立ち上がりの6分にFW鈴木唯人の変幻自在なドリブルからチャンスを作り、西澤のカットインから利き足とは違う左足でのシュートがゴールに突き刺さった。
右足でのキックは定評のある西澤だったが、左足でのあのシュートは入団3年目で初めて目撃した衝撃的なシュートだった。「あのゴールは自分の実力だけでないパワーがこもっていた」と、前節の中村のゴール同様に清水の残留を願うすべての人の想いが乗り移ったシュートだったのだろう。
その後、ベンチにいる指揮官の下へ。第35節北海道コンサドーレ札幌戦(2-2)で同点ゴールを決めたMF滝裕太と同じくユース時代から指導を受けた平岡監督へ一目散に西澤が抱き着いたが、このシーンは危険なゾーンで寄せ切れずにシュートを打たれて失点するという、今シーズンにこれまで清水が失点してきたパターンであり、それをC大阪相手に逆にゴールを奪ったことは感慨深いものがあった。
その後も足を止めることなく集中した守備とアグレッシブな攻撃を続け、後半31分の大久保のヘディングシュートもチームで唯一リーグ戦フルタイム出場となったGK権田修一が右手1本で防ぎ、同42分には10試合ぶりのDF立田悠悟と14試合ぶりの出場となるMF宮本航汰を投入し5バックとして、それまで続いていたC大阪の反撃の流れをピタリと止めた。
アディショナルタイムの3分も危なげなく守り切り、37試合消化して逆転勝ちは開幕戦の鹿島アントラーズ戦(3-1)だけだったが、これで2試合目。最初と最後の試合はエキサイティングな逆転勝利という展開で4チームが降格する過酷なシーズンの残留を自力で決め、結果的に14位で終えることとなった。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。